climatクリマという言葉には、2つの定義がある

climatクリマという言葉には2つの定義があるので、ここでは便宜上『climatクリマ1』と『climatクリマ2』と呼ぶことにします。

 

climatクリマ1は

気候学のことばで、気候や風土のことです。
ある場所の長期的な大気の条件を総合的にまとめたものが、その土地のクリマ1です。

たとえば、四季がある、雨期がある、夏は昼夜の寒暖の差が激しい、冬は湿度が高い・・などは、一年間だけでなくて、もっと長期的な視点で観測して具体的な数値とともにやっと捉えられるその土地の特徴ですよね。

それらを総合してまとめたものが、気候や風土、つまりclimatクリマ1です。ですから、日本人が気候や風土をということばを使うのと同じ気軽さで、クリマ1もフランス語の中で日常的に使われています。

 

ぶどうの葉がこうして黄葉するのも、四季があるからこそ。
この土地のclimatクリマ1(気候風土)が心を揺さぶるような風景としてはっきり現れる瞬間。

 

そしてこちらが本題。climatクリマ2は

16世紀ごろからブルゴーニュで使われていることばで、いわゆる方言の1つです。
climatクリマ2の定義は、テロワールの要素(ぶどう畑の向き、傾斜、母岩、土壌、標高、気候など)の違いをもとに、人間よって細分化されたぶどう畑の区画のことです。

 

Chambolle-Musignyシャンボール・ミュズィニー村を表した2枚の地図です。
左は1855年に作られた全クリマを記録した地図。
右は地質学的視点で編成された地図で、標高、母岩の質、断層などの情報が記されています。
最新の地図やこれらをぶどう畑を照らし合わせて散歩すると、いろいろなものが見えてきます。
『Terroirテロワールのことを、もっと知りたい』の頁で見ていきましょう。

climatクリマ2(細分化された区画)ごとに収穫したぶどうを、別々に醸造することで、それぞれの独自性が備わったワインが生まれます。確かな違いをもったclimatクリマ2がたくさんあるからこそ、互いが互いの違いを際立せますし、逆に親族関係にあるような共通点も浮かび上がります。

 

クリマ2とブルゴーニュワイン

こんなふうに、ひとつの村の中にいくつものclimatsクリマ2があり、わたしたちはそれらのワインにそれぞれの独自性を感じる、そのことがブルゴーニュのワインの特徴です

そのためclimatsクリマ2ということばは、ブルゴーニュ・ワインにとって欠かすことのできないキーワードであり、それぞれの細分化された区画であるclimatsクリマ2はブルゴーニュ・ワインのアイデンティティーだとも言えるわけですね。

ブルゴーニュのぶどう畑のクリマをユネスコの世界遺産に登録する協会(Association pour l’inscription des climats du vignoble de Bourgogne au Patrimoine mondial de l’Unesco)は、”Climats du vignoble de Bourgogne”(ブルゴーニュのぶどう畑のクリマ)というタイトルで、ユネスコの世界遺産登録を果たしましたが、彼らはブルゴーニュの1247つの区画をクリマとして数えています

 

誤解と混乱

もちろんブルゴーニュ人も、気候という意味のことばを使いたいときは、climatクリマ1を使います。しかも、テロワールの話をするときは、気候ということばが頻繁に出てくることは、お察しの通り必然。この2つの意味の違いを先に知っておくことで誤解や混乱を防ぐことができます。

そのクリマという言葉が、「気候や風土」と「人間よって細分化されたぶどう畑の区画」のどちらの意味なのかを意識しながら会話したいですね。

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