climatクリマということばには2つ意味があり、前ページではそれらを『climatクリマ1』と『climatクリマ2』と呼んでそれぞれの定義を見てきました。
climatクリマ1は気候学のことばで、気候や風土を意味し
climatクリマ2はブルゴーニュの方言で、テロワールの違いをもとに人間よって細分化されたぶどう畑の区画を意味するということでした。
では、microclimatミクロクリマの、クリマは1? それとも2?
ぶどう畑の特徴を話題にすときによく出てくるミクロクリマということば。ミクロといえば小さいという意味だけれど・・・ミクロクリマのクリマの部分を、1と2それぞれで解釈すると、かけ離れた意味になってしまいます。
ミクロクリマの、クリマは、1。微気候と訳されることもあります。
ある場所の長期的な大気の特徴を総合的にまとめたものが、その土地のクリマ(気候)ですが、ミクロクリマはごく狭い範囲を観測した気候のことです。
ブルゴーニュのぶどう畑の区画が、他の産地の区画に比べてびっくりするほどちっちゃいから、ブルゴーニュにはミクロクリマがある・・っていう解釈はかわいいけどこの場合、誤解なんですね。
ですからその観測する範囲の規模によって
microclimatミクロクリマ、mésoclimatメソクリマ、macroclimatマクロクリマ ということばも使われます。
ミクロクリマ < メソクリマ < マクロクリマの規模
しかし、その定義は統一されていないようです。
主な3つの定義を見てみましょう。
ミクロ・スケール 10cm~1km (葉、樹、畝、区画、村 規模)
【T.R.Oke『Boundary Layer Climates』Routledge、1987 3頁】
ローカル・スケール 100m~50km (区画、村、地区 規模)
メソ・スケール 10km~200km (地方規模)
マクロ・スケール 100km~1,000,000km(地方、国、大陸、地球 規模)
ミクロクリマ 10m~100m (区画規模 : (例)Les Musigny)
【ブルゴーニュで使われている感覚的なおおよその規模】
メソクリマ 数km~数10km (村規模 : (例)Chambolle-Musigny)
マクロクリマ 数10km~ (地区規模 : (例)Côte de Nuits)
ミクロクリマ ~1・2m (葉、樹、畝 規模)
【堀賢一 『ワインの個性』ソフトバンク クリエイティブ、2007 92頁】
メソクリマ 10~100m (畝、区画 規模)
このように違いがあるのですが、個々の数字は気にせずにおきます。重要なのは、ブルゴーニュのぶどう畑では範囲をズームインしたりズームアウトして観測すると、その範囲の気候にそれぞれの場所の特徴があり、特に、ごく小さな範囲での気候の条件に差が出るということです。それがミクロクリマと呼ばれているわけです。
たとえば実感としては、『なんか風がある日に限ってこの畑で働いてるなあ・・・』とたびたび思っていて、その区画での仕事を終えて、ちょっと離れた他の区画に移動すると風がやんでいる。『あ、風やんだねー』なんて、呑気に言っていたのですが、よくよく考えてみたらそれがミクロクリマ、堀氏の仰るメソクリマの一つだったわけですね。いつ行ってみてもその畑には風が吹いているのでした。その風の畑は谷からの風が通る場所に位置しています。
ミクロクリマとテロワールとの関係
こうした小さな範囲で異なる気候があるというミクロクリマの存在が、ぶどう畑の環境に多様性をもたらしています。
また、ミクロクリマにくわえて土地側の多様性や、人間の歴史や仕事などがそのぶどう畑の環境であるテロワールを構成しています。
そうしたテロワールの要素の違いが重なってできたぶどう畑の差をもとに小区画に細分化され、climatsクリマ2が誕生したということです。
テロワールについて詳しくは是非こちらをご覧下さい。『テロワールのことを、もっと知りたい』