いつも当ブログをお読みくださり、ありがとうございます。 『ブルゴーニュ コート・ド・ニュイのぶどう畑散歩ガイドブック』を運営しているフルニエめぐみです。
2010年よりブルゴーニュ在住。現在は、ソムリエのためのぶどう畑を観察できるようになる講座を作り、講師をしています。
調理師、ワインショップでの販売、フランス料理のレストランのサービス、ワインセミナーの講師として働いた後、ブルゴーニュへ留学、コート・ド・ニュイの複数のドメーヌで就労。時々ぶどう畑や醸造の仕事を頼まれて短期間手伝うことはありますが、現在は特定のドメーヌとの社員契約はしていません。
- 1 東京で食とワインにのめり込んでいました
- 2 ブルゴーニュのワインに対する強い興味と疑問をもっていました
- 3 その疑問を解決したくて、ブルゴーニュを2度ほど旅行しました
- 4 自分の疑問にとって、いかに専門用語や概念の理解が重要なのかを思い知りました
- 5 それで、基礎知識を身につけるために、ブルゴーニュに留学しました
- 6 この2年の留学で、ぶどう畑にかんする基礎的な専門用語が身につきました
- 7 そして、解決すべき大きな疑問 ブルゴーニュのぶどう畑の区画の何の差がぶどうの質の違いになるのか
- 8 一方で、ぶどう畑で何十年も毎日働いている実際の働き手がこの疑問について1人ひとり興味深い答えを持っているということに気づきました
- 9 畑で仕事をしていると、ぶどう樹も畑も言葉を話さないのでぐーっと想像が深まり広がっていきます
- 10 そして、彼らも個人的なイマジネーションを語ることを面白がります
- 11 ぶどう畑で働いているときに、いろいろな国のソムリエに出会いました。
- 12 せっかくここまで来ているのだから、ぶどう畑のみどころをなるべく短時間で体系的に理解してから、ぶどう畑を散歩できないだろうか
- 13 そして、作りました。7〜8年分の「これおもしろい!」「これ必須の概念だわ」を1日の講座に詰め込もうとして、なんども挫折しました
- 14 さてさて、何度も出てくるこの疑問。ぶどう畑の区画の何の差がぶどうの質の違いになるのか。
- 15 ご利用上の注意
資格とディプロム
日本 : 調理師(国家資格)、ソムリエ(日本ソムリエ協会 アドバイザーからの合流組です) フランス : Brevet Professionnel Agricole (CFPPA de Beaune)、 Pratique de la Dégustation par la Connaissance des Terroirs (Université de Bourgogne) また上記以外にも、ディプロムではありませんが社員教育の一環で、新しい剪定方法やぶどう樹の生理学、土壌の科学などの研修を受けています。
以下は、詳しいプロフィールです。食とワインへの興味が、ぶどう畑やぶどう樹への興味へと流れ込み、「ソムリエのためのぶどう畑を観察できるようになる講座」を作るに至るまでを書きました。
東京で食とワインにのめり込んでいました
東京生まれ。調理師、その休日にワインショップで働きながらワインスクールに通いワインアドバイザーの資格を取得、その後もスクールで学び上級クラスまで修了しました。
その頃には、フランス料理のレストランでサービスをしつつ、休日を利用してデギュスタシオンの講師をしていました。
また、お店で美味しい食事をすることを堪能していました。
ブルゴーニュのワインに対する強い興味と疑問をもっていました
当時からブルゴーニュのワインが好きで、とくに、区画ごとに香りや味わいに違いがあるということに強い興味がありました。
ある時、ワインセミナーの講師として教本を作っていたのですが、ブルゴーニュのぶどう畑の区画の何の差がワインの違いになるのかを自分が明確に説明できないことに気がつきました。
その疑問を解決したくて、ブルゴーニュを2度ほど旅行しました
いくつかの大好きなドメーヌで試飲しながら、ぶどう畑でぶどう樹に触れながら、生産者にお話を伺うことができました。今振り返ってみても、本当に素晴らしい経験です。
ぶどう畑の区画の何の差がワインの違いになるのか、それをそれぞれの生産者がどのように考えているのかなど、ノートに書いていた質問をぶつけ、おもしろい答えをいただいて、何度もなるほどー!と思い、理解が深まったと実感しました。
ところが、東京に帰って答えを書き込んだノートをじっくり読み返してみると、結局その情報では私の疑問は解決できていないことに気がつきました。
なぜかというと、生産者の方は私にわかりやすいように、よく考えられた例え話や抽象的な話で教えてくださったからで、具体的なことは全然理解していなかったわけです。
そりゃそうですよね。 たとえば、学生時代の若い自分に、今現在この仕事で1番面白い上澄みのような部分の詳細を説明しようとしたら、まだ職業特有の専門用語や、その仕組みや関係性を知らない自分を相手に、何かに例えて話をするしかありません。
生産者の方もそれがわかってるから、わかりやすいたとえ話や抽象的な話をして下さったわけです。
自分の疑問にとって、いかに専門用語や概念の理解が重要なのかを思い知りました
・そもそも、ぶどうの樹がどのような形をしていて、何の影響を受けて、どのように生長していくのか。
・生長段階に合わせてどんな仕事を施していくのか、どんな目的があるのか。
・ぶどう畑の土地はどのようにできあがったのか、気候にはどんな特徴があるのか。
・歴史の中で様々な決まりはどのようにできたのか。
こういった基礎部分を知っているから、具体的な話や、その生産者の個人的な考え方が理解できるんですよね。
それで、基礎知識を身につけるために、ブルゴーニュに留学しました
1年目はボーヌの専門学校で、ワイン醸造とぶどう栽培をともに実践と座学で学びました。
この時、提出義務だった2冊の研修レポートの、ぶどう畑の仕事の部分を日本語にしたのが『Vieille Vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(ぶどうの古木)の仕立て方』のもとになっています。この後の就労経験を合わせて充実させ、このサイトの人気カテゴリーになりました。
そしてこの頃、 「ブルゴーニュのぶどう畑の区画の何の差がワインの違いとして現れるのか」 という問いは、 「ブルゴーニュのぶどう畑の区画の何の差が収穫されるぶどうの質の違いになるのか」 に書き換えることができました。
なぜなら、ブルゴーニュのワインの独自性は、醸造や熟成の間に追加されるものではなく、収穫されたぶどうにすでに備わっていることを身をもって学んだからです。
また、これは私だけの認識ではなく、ブルゴーニュのワインに係わる皆の考えの基本に、この土地のワインの根源的な価値はぶどう畑からくるものだという共通の認識があることを確信しました。
1年で東京に帰って仕事をするつもりだったのですが、これだけでは知りたかったことの半分だということに気がつき、2年目はドメーヌで働きながらブルゴーニュ大学で、テロワールとワインの関係について学びました。
この時に提出義務だった1冊の論文で、ぶどう畑のさまざまな要素がぶどう果粒の成分にどのように関係しているのかを考えました。
我ながら若いというか、無謀というか・・当時の自分に、テーマでかすぎるよーっと教えてやりたい。
このために、ブルゴーニュのぶどう畑にかんする様々な専門分野の興味深い資料を見つけに見つけ、膨大な量をを読むことになったのでした。見つけるのは楽しいし、簡単なんですよね。見つけるのは。笑
この2年の留学で、ぶどう畑にかんする基礎的な専門用語が身につきました
そして、ぶどう畑を構成している数多くの要素を自分で観察できるようにもなりました。
数年前に旅行してはじめて眺めたぶどう畑は、感激的な風景でした。そうそう、風景だったんですね。ぶどう樹のどこを見るべきかわかっていなくて、畑の風景の中の漠然とした一部分だったんです。
それが留学後には、本当に様々な違いが面白いようにわかるようになっていました。
1本いっぽんの枝の違いも、器官の違いも、樹齢の違いも、区画ごとの違いも、樹勢の違いも、ドメーヌの方針による仕事の違いもです。ぶどう畑は、見どころばかりでした。ぶどう樹だけではありません。土壌も、気候も、仕事も多くの見どころがあります。
ぶどう樹が、興味深い。 ぶどう畑って、おもしろい。 うおーーーーーーーーーーーーー。 結婚して、子供たちが生まれました。 と書いて、ぶどう畑と結婚したみたいだなと思ったけどそれほど遠くもない。
そして、解決すべき大きな疑問 ブルゴーニュのぶどう畑の区画の何の差がぶどうの質の違いになるのか
この問いを完全に覆い尽くせる科学的な答えは、現在存在しないということがわかりました。コート・ド・ニュイのぶどう畑で科学的な実験を行って答えを出すのは原理的に無理ということです。
なぜなら、コート・ド・ニュイの区画はどんなに小さくても、区画内にすでに環境の違いがあり、1本ごとのぶどう樹の生育環境が均一でないためです。実験のために、樹齢やクローンが完全に統一されていることを確かめるのも難しいでしょう。
だから例えば、生長期に同じ区画内の2つのぶどう樹のグループを対象に、1つの要素を変えて生長の違いの統計をとろうとしても、2グループの生長の差が、別の要素の影響だという可能性を否定できないため、実験データが科学的だとは、なかなか言えないわけですね。
ブルゴーニュ大学の授業では、ぶどう畑を構成している要素の1つひとつを専門の教授が研究を解説してくださっても、それぞれの要素同士の関係性がぶどう樹へどのように影響するかというところまでは、語りうる範囲を超えているというのが現状でした。
一方で、ぶどう畑で何十年も毎日働いている実際の働き手がこの疑問について1人ひとり興味深い答えを持っているということに気づきました
科学的に検証されていなくても、長年の経験をもつ職人の勘が、ある種の統計とその解釈になっているというわけです。
それは科学的であるかにはよらず、とても重要な意味を持っています。彼らの経験と勘から、ぶどう畑での毎日の仕事が選択されているからです。
その畑が持っている潜在的な特徴を、ワインとして美しく表現するために、その特徴を備えたぶどうを恵んでもらうための仕事です。
畑で仕事をしていると、ぶどう樹も畑も言葉を話さないのでぐーっと想像が深まり広がっていきます
もちろん、基礎的なことは学校や社員教育で学びますし、共通認識を持っているのですが、基礎を離れると、1人ひとり独自のイマジネーションを持つことになります。自覚無自覚に関わらずです。
それぞれの生産者が持つ、ぶどう畑観やワイン観の多様さには驚かされますし、 だからこそ、ドメーヌごとにぶどう畑で行なう仕事に違いが出てくるわけです。
『Vieille Vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(ぶどうの古木)の仕立て方』でも再三書いていますが、同じ仕事でもそこに何を見出しているかによって差異ができます。
ワインになった時に、そのぶどう畑の特徴に変化はないが、美しさにはドメーヌによって違いがあるのは、この差異のせいだと考えると分かりやすいと思います。
科学的に証明されていること、科学的に証明されたばかりのこと、まだ証明されていないこと、そして科学で証明されることを別に期待していないような、いわば魔法のようなイマジネーションといった、様々な根拠に基づいて発想した仕事が、ぶどう畑やぶどう樹に日々施されています。また一方で、様々な根拠に基づいてその仕事をしないことも選択されます。
魔法のようなというのは、特定の農法を指しているわけではなくて、どんな農法であっても、そこにはぶどう畑を観察する個人的なイマジネーションがあるということです。
それをはじめて聞いて、不思議な印象を持っても、よくよくその観点や考え方を聞いていると、強い興味を持たざるをえなくなる理論です。
その区画の独自性を美しくワインとして表現しうるぶどうを恵んでもらうことができるし、しかもそういった彼らのワインは、往々にして世界的に有名な場合があります。
ぶどう畑が掻き立てる人々の妄想は、おもしろいです。働いていると、想像が、妄想が!止まらなくなるのです。
そして、彼らも個人的なイマジネーションを語ることを面白がります
ワインの違いを醸造や熟成の話だけじゃなくて、ぶどう畑の話で、もっとこの区画のワインを語りたいと言います。
どんなに醸造や熟成に心を傾けても、それは一瞬のことで、1年中仕事をしているのはぶどう畑で、その間ぶどう樹や畑のことを考えている。
1つのワインはぶどう畑から始まっていて、醸造や熟成でその区画らしさが追加されるわけじゃないから、そのワインの話をするなら、そのぶどう畑の特徴について語りたい。
こんなことを言い出す栽培に熱い人々は、剪定の話をし始めると止まらなくなります。
ぶどう畑で働いているときに、いろいろな国のソムリエに出会いました。
地図を片手に、ぶどう畑を散策をしているソムリエです。よく現在地の確認のために声をかけられました。そして、どんな作業をしているのか質問されて話し込むこともあました。
でもその短時間では、説明はどうしても部分的になってしまい、話し終わってソムリエが去った後に、「あー、あれを先に説明してなかったから、これを説明しても全然おもしろがれなかったんじゃ~」などと悶々・・
せっかくここまで来ているのだから、ぶどう畑のみどころをなるべく短時間で体系的に理解してから、ぶどう畑を散歩できないだろうか
そして、特級畑や1級畑、自分の好きな区画のぶどう樹を教材にしてぶどう畑を観察できるようになれば、区画ごとの違いがわかって最高に面白いぶどう畑の散歩ができると気がつきました。
また、ぶどう畑の専門用語を身につけて、ぶどう畑を観察できるようになってからドメーヌで生産者と話せば、試飲しているワインの区画について、面白い会話が成り立つのではないか。
あれ? ということはですよ? 私のこれまでのブルゴーニュでの何だのかんだのをあーしてこーすれば、ぶどう畑に興味があるけれど、留学するほど時間を割けないソムリエのためのぶどう畑を観察できるようになる講座を作れるのではないか、と思い至りました。
そして、作りました。7〜8年分の「これおもしろい!」「これ必須の概念だわ」を1日の講座に詰め込もうとして、なんども挫折しました
で、基礎編を2つ作りました。2日分です。1つだけでも受講可能ですが、トータルでコート・ド・ニュイのぶどう畑の特徴を知ってみたい方には2日受講していただくとよろしいかと存じます。(急に営業しだした私・・)
コート・ド・ニュイのぶどう畑に詳しい方々はたくさんいらっしゃいますが、ぶどう畑の要素にかんする概念の解説や、観察の仕方をしっかり身につけていただけるような講座はそうそうないはずです。
ソムリエと言っても、広義な意味でのソムリエさんを対象としています。レストランやバーのソムリエ、インポーターや問屋の買い付け担当・宣伝担当、ワインショップの販売員、ワインスクールの先生、ワイン雑誌のライターといったワインの製造段階では質には触れないけれど、お客様に対してワインの価値を高めることを仕事としている方々です。
ワインの根源的な価値はぶどう畑から始まっていて、ぶどう畑を観察することが面白いと言いまくっていますが、瓶の中に入ったワインとだけ向き合うと決めているソムリエを軽視しているわけではありません。
自分が一生懸命働いて稼いだお金を払って、そう決めているソムリエにサーヴィスをしてもらいたいと思いますし、瓶の中に入ったワインと試飲で向かい合うことって、おもしろいし重要です。そもそも、ワイン産地出身のソムリエでない限り、ソムリエは瓶の中に入ったワインと向き合うことから、はじまっているわけですもんね。
でも、瓶の中のワインや、グラスの中で変化していくワインだけじゃなくてどうしてもぶどう畑が気になって、ぶどう畑を訪れようとしているならぶどう畑を観察できるようになる講座を受けておくというという選択肢もここにありますよっ!と言いたいんです。
一緒にぶどう畑を歩きに歩いて、観察しましょう。 コート・ド・ニュイでお会いできるのを、楽しみにしています。
さてさて、何度も出てくるこの疑問。ぶどう畑の区画の何の差がぶどうの質の違いになるのか。
決定的で完璧な答えを知りたいし、一方で生産者ごとの様々な考えも知りたい
自分にとって1番面白いこの疑問は、ぶどう畑を歩いて観察しながら、文献を読みながら、ぶどう畑で毎日働く人々と会話しながら、自分のピノ・ノワールを観察しながら、様々なワインを試飲しながら、日々探求しています。
この世には、こんなに面白いことがあるんだ!! しかも美味しい!!!!!!!
ここまでお読みくださって、ありがとうございましたっ。
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