63. おわりに

一生を終えたぶどう樹を野晒しにして乾燥させたあと、家の暖炉に焚べている。暖炉用の薪にくらべておだやかな火がつくから、冬の最初の点火はvieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュではじめる。

その体からたくさんのワインを恵んでくれたぶどう樹が、炉の中で一際赤く光っている。

さてさて、ぶどう畑の1年の仕事をみてきた。
収穫まで書いたほうがいいかなとも思ったけれど、収穫は畑でぶどう樹に対して行う仕事ではあるけれど、醸造側の仕事だし『ヴィエイユ・ヴィーニュの仕立て方』ではないからいいだろう。

初めて記事を投稿してから7年間、こんなにゆっくりだったにもかかわらず、記事を更新するたびに世界各地から、本当に多くの方に読んでいただき感謝の気持ちでいっぱいです。

また、ぶどう畑の仕事に注目している人がこんなにもたくさんいるんだということにいつも感激しています。

そして、記事を書くにあたって多くの気づきやアイデアをくださった多くの人に、生きている方にも亡くなっている方にも感謝と祈りを捧げます。人だけじゃなかった。ぶどう樹も、畑の生態系も、星も、生き物じゃないけど、水も母岩も風へも。それにしても、これら全部がすごいし、不思議だ。気がつけてよかった。

7年間で得たことの中に、人って自由なんだ、ということがあります。
人は、何を考えてもいいし、何を見て何を感じてもいい
どんな制限を設けてもいいし、制限をいつはずしてもいい
どんなぶどう畑観・ワイン観を持っていてもいい
人と共有してもいいし、1人で楽しんでもいい。
人は自由なんだなということです。

たとえば、世界のワイン産地の中には、ぶどう樹をvieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(ぶどうの古木)にまで歳をとらせずに畑を更地にして、新しく苗木を植えることで魅力的なワインをつくるぶどう栽培を行っている人たちがいます。

ヴィエイユ・ヴィーニュを重視してもいいし、それよりも優先することが別にあってもいい。そこには自由なぶどう畑観・ワイン観があります。

生産者の考え方をもっと知りたいと思った時、このサイトでお伝えしている仕事の名前や目的やタイミング、さまざまな言葉の概念が必ず役に立つことと思います。

お伝えしたこれらの基本的と思われる概念ですら、人によっては、
「そうそう。それでそこに自分はこういう考え方を加えていて・・」
とか
「一般的にはそういうけど、自分はそうは考えていなくて、実は・・」
など、捉え方はさまざまです。

でも、こういった概念をまず知っておけば、先のような返事を引き出すとができ、さまざまな考え方を理解することができます。自由なぶどう畑観・ワイン観を広げていくきっかけになれば幸いです。

これからは、このサイトの運営にくわえて、
ソムリエさん、インポーターさん、問屋さん、酒屋さん、
ワインスクールの講師さん、ワイン雑誌のライターさんなど
ワイン造りの段階でワインの質には触れないけれど、
ワインの価値を高める仕事をなさってる方々を対象とした
ぶどう畑を観察できるようになる1~2日の研修プログラムも本格的に開始します。

ブルゴーニュにお越しの際はどうぞご連絡ください。

最後までお読みくださったことに、重ねて御礼を申し上げます。
これからもよろしくお願い致しますー!

ブルゴーニュ コート・ド・ニュイのぶどう畑散歩ガイドブック
フルニエめぐみ