さて、今日の堆積岩は2種類、生物岩と化学岩です。生物岩は生き物の化石が堆積してできた岩。一方、化学岩は何かしらの成分が化学反応を起こしてその沈殿物が堆積してできた岩です。
例えば、シャンパーニュやブルゴーニュのぶどう畑の母岩として有名な石灰岩はこの生物岩と化学岩です。つまり石灰岩には2種類あって、主成分が石灰質なので石灰岩に括られますが、成り立ちに違いがあるということですね。詳しく見ていきましょう。
主に生き物の化石でできている岩、生物岩
その生物の体の大部分がもともと石灰質でできていれば石灰岩になりますし、二酸化珪素でできていればチャートや珪藻土、珪藻岩になっていきます。
石灰質を大量に含んでいる生き物には、牡蠣をはじめとした二枚貝、さまざまな貝類、アンモナイト、サンゴ、プランクトンなどなどがいますよね。その時のその環境のおかげで一つの種が大量発生して最終的に水の底に沈んで、重なって体の中の有機物は抜けていって、岩になるその続成作用を受けることでお互いがくっついて一つの地層になったということです。
特にぶどう畑の母岩になる生物岩
シャンパーニュのチョークが有名です。円石藻と呼ばれる植物プランクトンの化石でできたチョーク(白亜)で、電子顕微鏡で見て初めてその形がわかるようなミクロサイズの化石の集まりです。
牡蠣の殻が大量に含まれている石灰岩は、シャブリやコート・ド・ニュイにもあります。
一方で、二酸化珪素を大量に含んでいる生き物には、植物プランクトンの珪藻や動物プランクトンの放散虫がいます。彼らも大量発生し水の底に沈んで化石になって珪藻岩の地層を作りました。
ぶどう畑の母岩になる珪藻岩としては、サンタ・リタ・ヒルズの珪藻岩があります。
そして、石灰質の化石と二酸化珪素の化石が同時に堆積してできた岩があって、それがヘレスのアルバリサ土壌の母岩になっているんですよね。あの”白いアルバリサ”で覚えたと思いますけど、石灰質だけでなく生物由来の二酸化珪素も含んでいるというのが特徴です。面白いです。
化学反応とその沈殿物が堆積した岩、化学岩
その時の環境によって炭酸マグネシウム、ナトリウム塩、カリウム塩、硫酸カルシウムなどなど、いろいろな成分が沈澱しうるんですが、今日は炭酸カルシウム、つまり石灰質の沈殿を見ていきましょう。
大きな川の上流で、カルシウムを豊富に含む岩が風化されいるところをイメージしてみてください。その岩が崩れた重くて大きな破片は、先に沈んでいきます。一方で、カルシウムは水に溶けてイオンの形で川を下っていきます。
カルシウムイオンのサイズは、1000億分の1mという単位ですからものすごく小さくて軽いわけですよね。そのおかげで遠くまで運ばれます。それはつまり海です。カルシウムイオンは海水中の炭酸イオンと出会って化学反応を起こします。
そうしてできるのが二酸化炭素と炭酸カルシウムです。この炭酸カルシウムこそが石灰質です。もしこの海が穏やかであれば、この炭酸カルシウムの粒子は海底に沈澱することができます。例えば数十万年も毎年毎日ちょっとずつ炭酸カルシウムが沈殿すると、100mを超すような分厚さの石灰岩にもなります。長期間環境が一定しているということは同じ質のものがたくさん堆積できるので、均質なぶ厚い岩ができるということで、
目に見えないサイズのものが、化学反応によって粉状の沈殿物になって堆積し続ければ、こんなに巨大な岩の層にもなるんですね。
生物岩の石灰岩と化学岩の石灰岩を比べてみると
チョークはいわゆる岩みたいに固くないという特徴がありますよね。だから黒板に字も書ける、このことを固結していないと言います。固結しているかしていないかの判断は、その鉱物に爪を当ててぐっと押し込んでみるとわかります。それで爪の跡がつくとその鉱物は固結していないと判断できます。
貝類の化石を含んだ石灰岩も、衝撃を与えると化石と化石を繋いでいる部分からパカッと割れたりして崩れやすいです。
それに比べて化学岩の石灰岩は、一般的により均一で密度も高いので、生物岩の石灰岩に比べてより崩れにくい岩になります。
もう一種類、有名な化学岩。シレックス
もう一種類、有名な化学岩を見ておきましょう。シレックスですね。プイィ・フュメやサンセールの母岩として有名なかのシレックス、二酸化珪素の硬い結晶です。
シレックスが特徴的なのは、海の中で石灰質や粘土といった他の堆積物が岩になっていく間、つまり続成作用を受けている間に、その内部に含まれていた二酸化珪素だけが一部分に集まってきて結晶を作るんです。いわば他の堆積岩の副産物的に形成されるので、シレックス単独では一枚の地層にはなりません。
では次回は、石灰岩が風化してできた石灰質土壌とか、マルヌってなんだろうというところを見ていきましょう。
こちらが音声版『宇宙ワイン』です。