植物の必須元素17個とワインの関係 〜炭素・水素・酸素編〜

植物の必須栄養素は17元素で、これらが組み合わさってぶどう樹の体が成り立たち、生長サイクルが回ります。今回は炭素・水素・酸素の3元素がぶどう果粒やワインの中でどんな存在なのか確認しながら、それぞれの元素を身近に感じてみましょう。

 

人間にとっての必須栄養素と、植物にとって必須栄養素の違い

人間の場合は、生きていく上で絶対に必要なのに、自分で作り出すことができない成分があります。例えばバリンやロイシンといった9種類のアミノ酸は、その材料になる元素が体内にあっても、人間はこれらの種類のアミノ酸に組み立てることができないんですよね。だから、すでにアミノ酸になったものを摂取する必要があります。

一方で、植物の必須栄養素の元素は水に溶けてイオン化した形や、分子であっても水や二酸化炭素といったすごく単純な形のものです。そして植物は体の中で、必要な形・複雑な形に組み立てることができます。

そんなふうに、人間と植物の必須栄養素には大きな違いがあります。

 

ぶどう果汁やワイン中の炭素・水素・酸素

その必要な元素17種類の中でも、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)の3元素は植物の体を作るため、最も大量に必要です。ぶどう樹は空気中から二酸化炭素、土から水を摂取して、炭素・水素・酸素を得ます。

ぶどう果汁が液体なのは、のおかげ、元素で言うと水素と酸素です。また、果汁が甘いのは糖のおかげですが、は炭素・水素・酸素の集まりです。しかも、面白いことに、酸味を呈するも、炭素・水素・酸素の集まりなんですよね。それはマロラクティック醗酵をしても同じです。

同じ種類の元素を使っているのに、原子の数の違いと分子構造の違いで、人間の舌に触れると全く違う味になるって、なんだかとても不思議です。ワインを作る上でのぶどうの重要な要素、「甘い・酸っぱい・液体である」が全て炭素と水素と酸素によるものだと思うと、分子構造がいかに大事なのかがわかります。

そして、ぶどう果汁やワインの中に存在する水、酸、糖、アルコールを構成する炭素と水素と酸素原子は、ぶどう畑に由来しています。水はその区画に降った雨だったし、アルコールを構成している炭素はその区画に漂っていた二酸化炭素だったということですよね。

それが、今日までこのボトルの中に閉じ込められていたというのもワインの魅力です。もちろん補糖や補酸がされていたら100%ではないですし、雨がほとんど降らない土地の場合は灌漑しますが、その土地の地下深くの水ということでしょうか。どちらにせよ、炭素・水素・酸素の集合であることには変わりがありません。

 

ぶどう樹の中の炭素・水素・酸素

一方で、ぶどう樹の体のことを考えてみると、葉っぱや茎はセルロースでできています。セルロースも炭素・水素・酸素の塊ですし、緑の茎は夏に茶色い木に変化しますが、この木質の成分リグニンも、炭素・水素・酸素の塊です。記事の途中で構造式の形式変えてすいません。でもこの方がいいと思います〜。

こうして図にして炭素・水素・酸素を見ると、光合成で作った糖分をぶどう樹が「ぶどう果粒に蓄えるか」「枝の生長に使うか」が、ワイン作りのためのぶどう栽培にとってどれだけ重要かが分かります。それはぶどう樹の性質や、栽培の技術の話に繋がっていくので、またいずれテーマを設けてお話しできたらいいなと思っています。

今日は、糖も酸もアルコールも、葉っぱも茎も枝も、炭素と水素と酸素の塊だーというお話でした。

 

こちらが音声版『宇宙ワイン』です。