ぶどう畑を掘ったら見つかる3層。土はどのようにできたのか。

ワインの資料で地質の項目を読むとき第1のコツは、まずその文が土の説明なのか、岩の説明なのかを見極めることです。ぶどう畑の地面を掘っていくと、上から順に3層に分けることができるんですが、どのようにしてこの3層ができたのか、3層同士にはどんな関係があるのかを押さえておくと、資料を読むときにどの層の説明なのかを明確にイメージできます。詳しく見ていきましょう。

 

3層は上から、土壌・耕せない層・岩の層

地面を掘ったときに観察できるその垂直の面を、何層に分類するかは専門分野によって様々で、20個以上の細かい層に分類して特徴づけることができるんですが、ここではそれを最も単純化して3層に分けて見ています。

1番上の層が土壌です。いわゆる土とか表土と呼ばれる部分です。2番目の層は、土はあるけれど深すぎるとか、大きな石が混在していて耕すことができない層です。下層土と呼ばれたりもします。そして3番目の層は岩の層です。まず1番上の層が土壌です。いわゆる土とか表土と呼ばれる部分です。2番目の層は、土はあるけれど深すぎるとか、大きな石が混在していて耕すことができない層です。下層土と呼ばれたりもします。そして3番目の層は岩の層です。

3層それぞれの厚さは、場所によって本当に様々

岩が露出している場所もありますし、1番上と2番目が合わせて数cmしかない場所もあります。逆に、何百m掘ってやっと岩の層が出てくる場所もあります。ワイン用のぶどう栽培には少なくとも土壌が30から35cm必要ですから、そういう部分がぶどう畑になってるわけですね。

ブルゴーニュ大学の地質学の先生が村の生産者組合に招かれて、その村の複数の区画に穴を掘って調査して解説するっていう会があるんですけども、その調査をいろんな村でやった結果、特級と1級の土壌は40cmが平均で、深い所でも70cmだということがわかったそうです。ロマネ・コンティはだいたい40cmです。

どうして3層はこの順番で重なっているのか?

それは岩から、土壌ができるからです。昔は岩しかなかった状態から土壌ができるまでをコート・ド・ニュイの石灰岩を例に見ていきましょう。

コート・ド・ニュイでは、約100万年かけて岩から土壌ができました。

広い岩場がある。1. 寒暖差で膨張と収縮を繰り返す。2. ヒビが入る(物理的風化)3. 雨水が入り込む。4. ヒビが大きくなる。5. ヒビの中の雨水が凍り膨張。6. 雨水が岩を溶かす(化学的風化)

広い岩場があります。暖かくなれば岩は膨張します。そして寒くなれば収縮します。どんな岩も成分が完全に均一ではないので、部分ごとに膨張率が違います。そのため、膨張と収縮を繰り返すうちにヒビが入ります。ヒビの中に雨水が溜まって、冬には凍ります。水は固体になると膨張しますから、圧力がかかってヒビは大きくなります。これを物理的風化と言います。

春夏秋、雨水が岩を溶かします。雨水は空気中の二酸化炭素がたくさん溶け込んでいるため酸性なので、アルカリ性のこの岩をよく溶かします。これを化学的風化と呼びます。

7. 水に溶けた岩の成分を摂取して生きる微生物が住みつく。8. 微生物の分泌物がさらに岩を溶かす(生物学的風化)。9. 風化が進む。10. 物理的・化学的・生物学的風化が相乗する。11. 光合成を行う生物があらわれる。12. 光合成によって有機物が生成される。

そのおかげで、たまった雨水に岩の成分の無機物がたっぷり溶け込んでいます。その成分を栄養にするバクテリアやアメーバなどが住み着きます。これらの生き物が出す分泌物は酸性なので、さらに岩を溶かします。これを生物学的風化と呼んでいます。

この物理的、化学的、生物学的風化が相乗して岩がボロボロになっていきます。

この図では見やすくするために、岩の表面がいつも画面の真ん中にくるように描いているんですが、じっさいは長い時間の中で何十mもの岩が崩れたり、微粒子になって飛んでいったり、水に溶けて流れていったりしている。また新しいヒビがどんどん出来つつ、この場所にとどまっているものもありつつ、大量のものが失われている・・、そんなイメージですね。

そして、光合成を行う生物の登場です。苔や、光合成できるタイプの菌類などです。光合成で有機物ができます。有機物はおおくの微生物の栄養となり、増殖を助けます。

13. 有機物は多様な微生物の栄養となり繁栄を助ける。14. 動植物の死骸が大量の有機物となる。15. より多様な動植物を呼ぶ。16. 植物の栄養となる成分を蓄えられる場所になる。17. 厚みのある軟らかな物質( 土壌!)のできあがり。

また、有機物は微生物によって腐植化・無機化されると植物の栄養になります。この腐植化・無機化は4回目で詳しく話しているので、忘れちゃった方はも1回チェックしてみてくださいね。こうして、多くの種類の植物が生えてきます。そうすると、そこに住む動物のサイズも数も増えます。そして多くの動植物が生きて、死ぬことで、そこから生み出される有機物も増えてきます。

そうしてできた大量の有機物は、次世代をより旺盛に繁栄させます。これらの作用の繰り返しで、植物ための栄養を蓄えておける物質ができます。つまり、岩由来の無機物動植物由来の有機物生き物生き物が腐植化・無機化した小さい無機物(水に溶けてイオン化している小ささ)、そして空気がまざりまざって、最初の岩とは完全に異なる軟らかい物質ができあがります。

柔らかい、厚みがある、植物の栄養を蓄えておける。だから、大きい植物が生きられる。これが、私たちが「土」と呼んでいるものです

こんなふうに、コート・ド・ニュイでは100万年かけて数十センチの土が出来上がったと考えられています。なんで100万年なのかは、また別の話ですけども、何年かけて年センチの土ができるかというのは場所によって、ワイン産地によってまったく違うその土地の歴史ですね。その歴史の毎日を生きてみることはできないですけど、その結果出来上がった土壌で育ったぶどうのワインを飲むことができるんですよね。面白いです。

岩と土壌には親子関係があるから、この岩のことを母岩と呼ぶ

このポッドキャスト1回目の投稿で、「土は5つの要素で成り立っている」と言っていました。「その5つの要素のうちの1つ目の無機物が、土の基礎材料である。そして無機物に他の4要素、有機物・生き物・水・空気が混ざり込んで土になっているんだ」という話でした。

今回の投稿では、「その土の基礎材料である無機物はこの岩から来てるんだよ」ということを見てきました。

だからこの岩は母岩と呼ばれるし、この岩と土には親子関係がある。そう考えてみると、2番目の層は岩から土壌ができていく過程の層と捉えることができます。だからこの岩は母岩と呼ばれるし、この岩とこの土には親子関係がある。そう考えてみると、2番目の層は岩から土壌ができていく過程の層と捉えることができます。★は崩れた母岩の破片なので、その母岩の割れ方の特徴によって様々な形で存在しています。

そして重要なのは、親がどんな種類の岩だったかによって、子である土の性質も様々だということです。土の性質がぶどう樹に影響を与えているんだけれども、その土の性質は母岩に由来しているんだ。さらに、岩も直接ぶどう樹に影響を与えると考えならば、その区画がどんな母岩なのかに多くの人が注目するし、ワインの資料に記載されるんですね。

土地によっては、岩と親子関係がない土壌も

たとえば岩の上に、土砂崩れなんかで土が遠くからやってきた場合とか、川が上流から大量に運んできた無機物が岩の上に堆積して、その堆積した無機物が基礎材料になって土になってる場合もありますし、また、その運ばれてきた無機物がらさに風化されたものが基礎材料になっている場合なんかです。

例えば、ボルドーのあの砂利は、ピレネー山脈からガロンヌ川が運んできたんでしたよね。この場合、運ばれてきた2層目が元になってできた土とも言えます。その場合は下にある岩のことを、母岩とは言わずに基岩と言います。

コート・ド・ニュイの特級・1級に格付けされている区画はみんな、母岩とその子供の土壌ですし、ACブルゴーニュの区画には川が運んできた無機物が基礎材料になった、三層目の岩との親子関係のない土壌もあります。

こちらが音声版『宇宙ワイン』です。