baieベ(果粒)の中にある3タイプの維管束

pédicelleペディセル(小果梗・小花柄)に走っているfaisceauxフェソー(維管束)は、ぶどう果粒の中の維管束と繋がっている。そして、その維管束は果粒の中で、3つのタイプにわかれている

 

3タイプの維管束

faisceaux centrauxフェソー・ソントロー(中軸の維管束)は、果粒の中央を縦に貫いて、柱頭の先端の点まで達している。

faisceaux séminauxフェソー・セミノー(種子につながる維管束)は、pédicelleペディセル(小花梗)に近い部分で中軸の維管束とわかれ、種子と繋がっている。

faisceaux périphériquesフェソー・ペリフェリック(周縁維管束)は、pelliculeペリキュール(果皮)のすぐ下であり、pulpeピュルプ(果肉)の表面に、網状のネットワークをめぐらせている。

 

果皮直下の維管束

写真左は、épicarpeエピキャルプ(外果皮)をめくったピノ・ノワールの果粒だ。
mésocarpeメソキャルプ(中果皮)の表面に
faisceaux périphériquesフェソー・ペリフェリック(周縁維管束)のネットワークが見える。

 

ぶどう樹とつながる果粒

これら果粒の維管束は、pédicelleペディセル(小果梗・小花梗)の維管束とつながり、それはrafleラーフル(果梗・花梗)の維管束とつながる。そして今年生長した枝の維管束とつながり、それは葉の維管束や、より歳をとった枝や幹の中の維管束とつながる。そして根の維管束ともつながっていく。

このぶどう果粒が醸造されてできたワインが、テロワールを表現するということは、この果粒の中にそれを実現するための要素が存在するからだ。それぞれの区画によって独自の特徴を備えたワインができるということは、それぞれの区画のぶどう果粒に、すでに個性があるということになる。

 

色づき期初期のピノ・ノワールの果粒を縦にに切った断面。
右半分の果皮は、ほぼ緑色を失っているけれど、左半分の果皮はまだその色を留めている。
果皮が品種特有の色まで達していないおかげで、
faisceaux périphériquesフェソー・ペリフェリック(周縁維管束)がよく見える。

 

色づき期後の果粒は葉緑素を失い、光合成をしなくなるため、維管束をとおして各種栄養素の受取手になる。果粒は受け取った栄養素と、環境によって成熟していく。

その環境というのも2つある。1つ目は、ぶどう房の原基が休眠芽のなかで作られる時点から収穫までを数えてた1年半ほどの生長期(休眠期含む)のぶどう房にとっての環境。2つ目は、ぶどう樹が数十年・100年を超えて生きる環境。

生長するぶどう房・果粒は、この世に存在するのはたった17ヶ月ほどだけど、その短期間の環境に左右されるだけでなく、ぶどう樹を通じて2つ目の長期的な環境の影響もうけている。

3つのタイプの維管束でぶどう樹とつながって、果粒は環境の結果になる。そして、それぞれの区画の独自性を特徴を備えたワインになるのだ。