土とは5つの要素が作るシステムのこと

土を構成する要素は、無機物、有機物、生き物、水、空気の5要素で、お互いに強い関係性を持っています。植物が栄養素として根から吸収するのは、水に溶けた無機物です。

この5つの要素を、1つづつ見ていきましょう。

無機物、有機物、生き物、水、空気がどのように土を構成しているか

土を構成する要素の1つめは無機物。粘土、シルト、砂といった細かい粒子です。この無機物の粒子が、土の基礎材料なんです。なので、無機物をベースに、他の4要素が混ざり込んでいるんだとイメージしてみてください。

2つめの要素は空気です。土は大小さまざまなお団子が集まっているような状態なので、そのお団子の隙間隙間に、空気が存在しています。おもに二酸化炭素、窒素、水蒸気で、酸素の濃度は、地上よりも低いんです。

なぜかというと、3つめの要素、生き物が呼吸しているからです。
大小さまざまな生き物がいます。もぐら、ミミズ、昆虫、クモ・ダニ、線虫、原生動物、きのこなんかの菌類・細菌類などなど・・。微生物については、まだ研究真っ只中という感じで、わかっていないことが多いです。

大さじ一杯の土壌の中に、数億とか、数十億の微細物がいると言われています。そんな全ての微生物のDNAを調べたり、どんな働きをしているのかを一つ一つ特定するのはとても難しいということです。なぜかというと、ラボの中で作り出すことができる環境で培養するのがまだまだ難しい微生物が大量にいるからですね。だから、土の中の微生物は数%しかわかっていないというような言われ方をしています。

それでも、生き物が土壌の中でしている重要な働きはわかっています。それが腐植化無機化です。この2つのキーワードはこのシリーズを通してずっと出てくる重要な言葉なので注目してみてください。

腐植化とは、生き物によって大きな有機物が小さな有機物に分解されていくことだ。

腐植化ってなにかというと、4つめの要素である有機物と深い関わりがあります。まず、生き物が命を全うしたら、その体が大きな有機物の塊になります。それは粗大有機物と呼ばれる大きな有機物です。で、それを他の生き物が食べて、生きて、排泄すると、中くらいの有機物になって出てきます。そして、この中くらいの有機物を、また別の生き物が食べて、生きて、排泄すると、より小さい有機物が出てきます。これが、腐植化です。平たく言うと、腐っていってるってことですね。

無機化とは、生き物によって小さな有機物が無機物にまで分解されることだ。

そして、また別の生き物が、この小さくなった有機物を食べて、生きて、排泄すると、無機物にまで小さくなる。これが、無機化です。こうしてできた無機物は、5つめの要素の水分に溶けると、植物の栄養になることができます。

 

植物の根は、水に溶けてイオン化した無機物を吸収する

ぶどう樹のねっこ、植物の根は、水に溶けてイオン化した無機物を吸収するんですよね。有機物は大きすぎて栄養にできないんです。だから、土の中の生き物による腐植化と無機化が1本のぶどう樹の生長にとっても、地上を含めたその場所全体の生態系にとっても非常に重要です。

とはいえ、ブドウ糖の分子は小さいので、根から吸い上げることが実は可能です。でも、ぶどう房をあれだけ甘くするために根から糖を吸い上げるとなるとそれだけ大量の水分が必要になってしまいます。だからやはり、充分な無機物を根から吸い上げて健康な樹体を作り、その葉で存分に光合成して糖をぶどう房に送るのが現実的です。

 

土というのは物の名前というより、この5つの要素が作るシステムの名前である

こんなふうに土を構成する5つの要素は、ひとつ欠けたらうまく回らなくなるようなシステムを作っています。植物が生きるには、生き物に腐植化と無機化をしてもらう必要がありますし、土の中でその生き物が生きるには、食べ物である有機物、そして水と空気が必要です。そして、植物も動物も命を終えれば大きな有機物として、生き物の栄養源になっていくので、それぞれが繋がっています。

土とはものの名前ではなく、無機物・有機物・生き物・水・空気の5要素が作るシステムの名前だと理解してみる。

なので、土というのは物の名前というより、この5つの要素が作るシステムの名前なんだというふうに理解しておきたいんです。

そう理解しておくと、土に関する様々なことに理解を進めていけます。たとえば、有機農法って何かとか、肥料を全く使わない農業ってどう仕組みなのか知ったり考えたり、あれ?じゃあ肥料ってなんだっけとか。他にも、粘土質土壌とか、石灰質土壌って何か、持続可能な農業とは?とか、そういったさまざまな種類のワインを理解するのに役に立ちそうです。

 

最後に付け足しとなりますが、水も空気も無機物ですよね。でも、ここではあえて分けて5つとしています。レストランのメニューで、飲み物と食べ物が分けて書かれていると見やすいし選びやすいのと同じと捉えていただければと思います。

 

こちらが音声版『宇宙ワイン』です。