buttageビュタージュ(土寄せ)はぶどう樹の根元に、畝の両側から土を盛っていく耕起のひとつで、厳寒期がくる前におこなう。
盛り上げる土の量は、その区画のぶどう樹の樹齢や特徴にあわせてほんの数センチから、幹が半分くらい隠れるまで深くおこなう場合までさまざま。お馬さんやトラクターの力を借りて行う。
ぶどう畑で働くトラクターはenjambeurオンジョンブー/アンジャンブーと呼ばれ、垣根を跨いで進むことができる設計だ。(enjamberと綴ると跨ぐという意味の動詞)
こうしたトラクターは取付ける道具によって、いろいろな仕事をこなせる。この日の装備はビュタージュ用というわけ。
この装備を土に沈める深さを調節することで、土が掘られる深さと盛られる高さ、つまりビュタージュの深さが決まる。
ビュタージュの目的
・冬の寒さ、そして霜からぶどう樹の幹を守る
・この1年の生長期に土壌の浅い部分に水平に伸びてきた根を切ることで、なるべく垂直に深く育つ根を増やす
・コンポストや肥料が撒かれる場合、それらを土と混ぜる
・春直前におこなうdébuttagデビュタージュ(畝崩し)と組み合わせることで、霜で強ばった土壌をほぐす
霜が下りた土
土の水分が凍結して、指で押してもガチガチでほぐれない。温度の低すぎる冷凍庫で保存したアイスクリームのようで、食欲とともにスプーンで力いっぱい掘ろうもくじける硬さを想像いただきたい。
冬の仕事の段取りの重要性
剪定もbuttageビュタージュ(土寄せ)も気候にあわせて行うことが重要なのは今までのページで見てきた通り。
ところが、剪定、枝の片付け、buttageビュタージュ(土寄せ)の3つの仕事は段取りよく進めないと、枝が邪魔してにっちもさっちもいかなくなってしまう。
もし先に剪定が済んだ場合、枝の片付けを終えないと切り落とした枝がつっかえてトラクターが畑に入れず、buttageビュタージュ(土寄せ)ができない。
じゃあ先にすべての区画をbuttageビュタージュ(土寄せ)して終えばいいかというと、土が水分を含みすぎていると不可能だから、先に剪定を始める場合が多い。
写真左の畑の仕事の順番は
buttageビュタージュ(土寄せ)→1回目の剪定→枝の片付け→2回目の剪定
これは1回目の剪定が終わったところ。
そして右の畑は、今年で67歳になるvieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)なのでbuttageビュタージュ(土寄せ)は行わない。冬でも根は呼吸しているのだけれども、土を盛ってしまうとvieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)は呼吸が難しくなってしまうという考えのもとだ。
畑では個々の仕事の精度の高さはもちろんのこと、刻々と変化する季節の中で複数の仕事の振り分けがうまくされるかどうかも、ぶどう樹の生長に大きくかかわってくるというわけだ。
いつ春が来るか、いやまたぐっと寒さが戻ってくるか・・年によってまちまちの環境の中で、畑で働く者の経験と勘がはっきされる部分であり、その判断は職人芸だなと思い知らされる。
無事buttageビュタージュ(土寄せ)、tailleタイユ(剪定)、brûlageブリュラージュ(剪定で切り落とした枝の焼却)を終えたcordon doubleコルドン・ドゥーブル。