寒すぎてtailleタイユ(本剪定)できない日は、brûlageブリュラージュ(切り落とされた枝の焼却)日和だ。そして順調に剪定を完了して、暖かくなりだす前に終えておきたい仕事でもある。
brouetteブルーエット(手押し車)に集めた枝をつぎつぎと入れて、燃やしながら進んでいく。一度畝に入ったら後戻りはできないので、その時の風向きをみて、自分が煙にあわないよう押して入ったり引いて入ったり。時々わざと枝を入れすぎて休憩。
枝の多くは垣根仕立てのための針金に巻きついているから、ひっぱって巻きひげをちぎる。巻きひげは数回巻いたあと、逆回転で巻きつくというひっぱられ強い構造だ。負けてられない。ひっぱるひっぱる。落ちている枝もすべて拾う拾う拾う。1本くらいいいかーというのはなし。
目的は病害の原因菌を減らすこと
なぜなら、枝についたoïdiumオイディウム(うどん粉病)やmildiouミルデュー(ベト病)のカビは土の上で寒さから身をまもって越冬し、春夏の気温と湿度で増え雨の跳ねかえりで葉や新梢や花や実につけば、次回の収穫を脅かすことになるからだ。
これらの病気は、maladies du bois(ぶどう樹の病気)の一種ではないから、ぶどう樹を死に至らせることはないけれど、春からのぶどうの生長期に蔓延すると、光合成や結実や成熟を妨げたりと、生長のどの段階であってもやっかいだ。
収穫されるぶどうの量と質、そしてそのワインにまで大きな影響を及ぼしえる。
うどん粉病やベト病に対する対策は
・通気性が良くなるように枝が間隔をあけて発芽できるように剪定する
・新梢が茂りすぎないように摘芽する
・窒素が過剰にならないように肥料を調節する
・的確なタイミングで農薬散布する
などなどいろいろあるけれども、brûlageブリュラージュの効果は高い。もともとのカビの量を減らせるからだ。
剪定で切り落とした枝の片付け方いろいろ
枝を焼かないでそのまま畑にもどす
剪定で切り落とした枝を剪定鋏で数センチの長さにして土の上に撒いておく。
この方法を選択する生産者は、ぶどう畑からワインだけを恵んでもらうという考え方だ。収穫したぶどうを醗酵槽にいれる前にとりのぞいた果梗や、醸造後にワインを搾ってでた果皮と種も畑に返し、剪定で切り落とした枝も焼かずにそのまま畑に返す。
1回の生長期にぶどう樹が畑(環境)から恵んでもらったものの中から、ワインだけを頂いて、それ以外をできるかぎり土へ返すというわけ。
集めた枝を工場へ運んで、暖炉用の燃料に加工する
近年始まった持続可能な農業の取り組みの1つだ。ぶどう畑で燃やされれば熱は何にも利用することはできないけれど、家の暖房になればより環境に配慮できる。この技術は有機栽培の認証を受けている畑にも使用可能。
今後数年のうちにこの方法が一般化し、畑でのbrûlageブリュラージュ(切り落とされた枝の焼却)が禁止されるのではないかとの話も聞こえる。