植物の必須栄養素を備えた冷蔵庫、粘土腐植複合体

植物の必須元素は水に溶けてイオン化しているので、そのままにしておくと雨水に流されて失われてしまいます。だから冷蔵庫が必要ですし、大容量の冷蔵庫であれば、その土はたくさんの栄養素を蓄えておけます。

粘土腐植複合体は、粘土鉱物と腐植とカルシウムでできている

冷蔵庫、正式名称は粘土腐植複合体は3つの要素から成り立っています。1つ目は粘土鉱物。2つ目が腐植。3つ目がカルシウムです。粘土鉱物と腐植はマイナス電荷を帯びていて、プラス電荷を帯びているカルシウムが接着している状態です。(同じようにプラス電荷を帯びたマグネシウムによって接着されている場合もあります。)

粘土鉱物とは

前回見た通り、粘土は4μm以下とすごく小さな粒子です。その粘土の中に粘土鉱物が含まれています。粘土鉱物は金属イオンやケイ酸でできた薄ーい層の重なりで、層と層の間に電荷を帯びています。

粘土鉱物の粒子は小さくて軽いので、環境によっては単独でいると雨風にさらされて、流されたり飛ばされたりしてその場所からかんたんに失われてしまいます。ところが、カルシウムによって腐植としっかりくっつきあうことで、その場所に安定して留まることができます。

腐植とは

腐植は、腐植化されている途中段階の中くらい〜小さいサイズの有機物のことです。まだ腐植化される前の大きな有機物は、死んだばかりの生き物の形や、落ちたばかりの葉っぱの形を残している状態ですが、それが中くらいの有機物になっているということは、もう生き物によって少なくとも1度は食べられて排泄されたものということです。

これら、粘土鉱物と腐植がカルシウムによってくっついて、植物にとっての冷蔵庫、粘土腐植複合体になっています。そして重要なのは、この冷蔵庫は全体としてマイナスの電荷を帯びているということです。

冷蔵庫だから、栄養素の保管も植物への供給もできる

植物の必須元素の多くは水に溶けてイオン化するとプラスの電荷を帯びるので、マイナスの電荷を帯びている冷蔵庫にしっかりと固定されます。(今回は出てきませんが、プラスの電荷を帯びた冷蔵庫も存在します。)

なぜ冷蔵庫に例えられるのかというと、もし大雨が降ってきても栄養素が流れ出さずに保管しておけるし、そして、冷蔵庫に保管されている栄養素はいつでも植物の根が吸い上げることができるからです。つまり、すぐ食べられる料理がしまってある冷蔵庫って感じです。

 

だから「1つの冷蔵庫がマイナス電荷をいくつ帯びているか」がイコール、「固定できる栄養素の量」と言えるわけですよね。それは1つの冷蔵庫の「棚の数」に例えることができます。棚が多い冷蔵庫であれば、たくさんの料理をしまっておけます。

そして、実はその「棚の数」は冷蔵庫の材料である粘土鉱物の種類によって決まるんです。なぜなら粘土鉱物は、マイナスをたくさん帯びたモンモリロナイト、少ししかマイナスを帯びていないカオリナイトなど、種類によって電荷を帯びる量に差があるからです。

 

トータルでは「冷蔵庫の数」と「その冷蔵庫の棚の数」が組み合わさることによって、その土全体としてどれだけ栄養素を保持していられるかが決まります。図では極端な例として棚が多い冷蔵庫がたくさんある土と、棚が少ない冷蔵庫が少ししかない土をあげてみましたが、一目瞭然で、左の土の方が栄養素を多く保持しておけるというのがわかりますね。もちろん、棚が多い冷蔵庫が少しだけある土などなど、さまざまな組み合わせがあり得ます。

冷蔵庫を作ることや、棚の数を変えることが「土づくり」

その土にもともとどんな種類の粘土鉱物が含まれているのか、または粘土がほとんど含まれていない土性なのか。前回土性の話の中で、砂ばかりだと栄養素を保持する能力が足りないと言ってましたよね。その話がまさにここに繋がってきます。そして、そこに腐植はあるのか?また、カルシウムやマグネシウムなどの、粘土鉱物と腐植をくっつけてくれる接着剤の役割の成分はあるのか?ということが重要になってきます。

ですから、ある場所で農業をしようとした場合、粘土鉱物・腐植・カルシウムのうち、あまりにも不足しているものがあれば追加しようという考え方が出てきます。それが「土づくり」という考え方です。農業でもガーデニングでも「土づくり」という言葉はよく聞きますが、つまりこれは植物にとっての冷蔵庫を作ろうとしているわけですね。

 

こちらが音声版『宇宙ワイン』です。