土を親指と人差し指の間で擦ってみて、ザラザラするのか、それとも何も引っかかりのない滑らかな質感なのか、これを決めているのがその土に砂・シルト・粘土がどのくらいの割合で含まれているかです。
これら3つの粒子は性質が異なるので、程よい割合で混ざることで、それぞれの特徴が活かされて農業が可能になります。
砂・シルト・粘土は粒子の大きさで定義されている
土を構成する5要素の中で、基礎素材の役割を担っているのが無機物の粒子、砂・シルト・粘土です。これらの粒子は大きさによって定義されていて、砂は2mm〜62.5µm、シルトは62.5〜4µm、粘土は4µm以下です。
国や専門家、そして分野によってこれらの細かい数値は変動しますが、砂が最も大きく、次がシルト、粘土が最も小さいという定義に違いはありません。また、ここで示した数値はブルゴーニュ大学の授業で先生たちが使っているものです。
農地にとっての粘土質土壌とは
作物の収穫を得られるような土地の場合、この3種類の粒子が程よい割合で混ざった状態です。よく、ぶどう畑の説明をするときに、粘土質土壌とか、砂質土壌(さしつ)という言い方をしますが、粘土が100%という意味ではなく、程よく3種類が混ざっているんだけれども、粘土が多めですよ。というのが粘土質土壌が示す意味です。
粘土には植物にとっての栄養素を蓄える能力があるのですが、粘土100%だと水が通らなかったり植物が根を張れなかったりと、農業をするには向かない状態です。一方で、砂100%でも水捌けが良すぎたり、植物にとっての栄養素を蓄えておく力がなさすぎて、これも、農業をするには向きません。シルトも100%では水捌けが悪くなってしまいます。
ですから、それぞれ特徴を持った3種類の粒子がいい感じの割合で混ざっていることが、農業をするための土にとって重要だということになります。では、いい感じってどんな割合でしょうか。
土性の分類を示した三角形の図
この三角形はフランスのナンシー大学のデュショフール教授が作った土性の分類図です。見方としては、正三角形の頂点がそれぞれ砂・シルト・粘土100%、三角形のど真ん中がそれぞれを三分の一ずつ、三辺はそれぞれ2種類の粒子の割合を示しています。
そして色分けがされていて、オレンジ色の部分が農業のためにちょうどいいとされる3種類が程よく混ざった土性です。その上で、オレンジの中でもより上の方の部分が、「程よく3種類が混ざっているんだけれども粘土が多めな、いわゆる粘土質土壌」、オレンジの中でもより左下の部分が砂質土壌、同様により右下の部分がシルト質土壌と呼ばれているということです。作物との相性によっては、もちろんオレンジの外でも栽培は可能です。
このように、3つの粒子それぞれに特徴があるので、何割ずつ含まれているかによって、その土全体の性質にも違いが出ます。それが土性を知る大きな目的です。
土性の違いがぶどう樹の生長やワインの質に違いをもたらす
例えば土性の異なる2つの土地に、同じように雨が降っても水捌けの速度が違うとか、同じ肥料を同じ量を与えても効果に違いが出ます。そうすると、同じDNAを持ったぶどう品種を植えても同じようには生長しないので、農作業にも、出来上がったワインの質にも差が出てきます。
だからこそ、その土性に相性の良い品種を見つけ出したという産地ごとの歴史があるわけですよね。土性以外のパラメーターも加わるから他の産地の真似をしても単純には成功しないため、個々に試行錯誤するのでとてつもなく時間のかかる仕事です。今私たちが飲んでるワインは、その時間の産物でもあるのだなと感じますし、今まさに新しくぶどう栽培を始めようとしている畑は、土地と品種の出会いというものすごく面白いタイミングにあるということです。
場所ごとにもともと土性に違いがあるとか、ぶどう品種ごとに好きな土性があるのは地球側の性質ですが、それを人間が観察して組み合わせていくというのは土と品種と人間の知性が混ざって切り離せなくなっている状態がぶどう畑なんだということですよね。面白いです。
そして、今日見てきた土性の分類は西ヨーロッパで使われているものです。他の国や地域に行けば、その土地を分類するのに相応しい土性の基準があります。
土性というのは、そういう農業をする上で知っておきたい、その土地の重要な情報の1つです。だから、ワインの資料でぶどう畑の情報を読んでいると、土性に関する記述がよく出てくるんですね。他にも土の性質を表す様々な記述がありますよね。今後一つずつ見ていけたらいいなと思います。
こちらが音声版『宇宙ワイン』です。