現在、ブルゴーニュのぶどう樹の栽培には、垣根仕立てが採用されている。
整然と並べて植えられたぶどう樹を、杭と針金を使って生け垣のように仕立てるからこう呼ばれる。
しゃがんで撮った写真(収穫一週間前)
垣根仕立ての構造
夏、生長した枝は仕事をほどこされ、地面から約120〜140cmほどの高さになる。一方、垣根の長さはその畑の形によって長くも短くもなる。
piquet ピケ(杭)は、ぶどう樹6・7本に1本の割合で打たれていて、4本の針金が、杭に高さ違いで1本、2本、1本と固定されている。
一番下・1本 ; fil de tailleフィル・ド・タイユ : ぶどう樹の幹の高さに固定された針金。
真ん中 ・2本 ; fils doublesフィル・ドゥーブル : 枝を挟んで2本。高さを変えられるよう、始めと最後の杭にだけ固定されている。
一番上・1本 ; fil du hautフィル・デュ・オー : 杭の高さより僅かに低いところに固定されている。
端の杭 左側に垣根が仕立てられている。
さて、1年を通してのぶどう畑の仕事を、収穫直後から見ていくことにしよう。
前回カレンダーに書いた10月頃からだ。
収穫を終えると、冬のtailleタイユ(本剪定)にむけて準備にかかる。
dégrafageデグラファージュ
枝を固定する為にfils doublesフィル・ドゥーブル(真ん中の2本の針金)に挟んであった枝を解放するため、ホックを1つひとつ取っていく仕事のことだ。
fils doublesフィル・ドゥーブルとagrafe アグラフ(ホック)
枝が隣のぶどう樹の枝と混ざらないよう、固定する為に付けていたホックも外し
針金に巻き付いているぶどうの蔓を千切り、自由になった2本の針金を杭の上に持ち上げておく。
枝を固定していた針金をはずしておけば枝を簡単に動かすことができるので、両手を使って自由に剪定が行える。
畑での仕事は1人が1本、もしくは両側2本の畝を受け持ち、1本1本の樹に確実に仕事をほどこす。ひとつの畑を1畝ずつ行き、端まで終えたら隣の畝へ移り、帰り、また次の畝を行く。
そうすれば忘れられる樹も畝もない。同じ畝に対して同じ仕事は繰り返し行われないから1つひとつが確実に正確に行われ、すべての畝が終われば次の畑へ。
さあ、これから長い剪定の季節に突入する。
おまけ 垣根じゃない仕立て
土地や品種の特徴により、仕立て方が異なる。
ドイツのモーゼルの急斜面では棒仕立て、南仏やスペインではゴブレと呼ばれる株仕立て、日本のいわば特級畑、山梨の鳥居平の甲州(品種名)は天井のように枝を誘導する棚仕立てが主流だ。
こちらは鳥居平
そしてこちらは中世のブルゴーニュのぶどう樹の仕立て
Abbaye de Cîteaux シトー修道院にて。