60. effeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)

茂っていた葉がエフイヤージュ(摘葉・除葉)され、隠れていたぶどうがたくさん出てきた。

effeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)は、必要ないと判断した葉を摘みとる仕事だ。

もともとこの仕事は、ぶどうの収穫作業のスピードアップのためにおこなわれていた。

ぶどうの葉はおとなの掌ほどの大きさに広がり、しかも重なり合っているので、ぶどうの房を隠している。だから葉をそのままに収穫をはじめてしまうと、たくさんのぶどうを採り残してしまう。

とくに白ぶどうは房の色が葉と同化してしまい、大きな房でも見逃してしまう。せっかくここまで育って熟したぶどう房の摘み逃しを避けるために、ぶどう房を切る前に葉を摘みとるのが収穫のはじめの作業となっている。

しかし、収穫したぶどうを入れるバケツとはさみを持って、ぶどう樹1本いっぽんを移動しながら、毎回まいかい葉を摘みとるのはとても非効率的だ。

そこで、収穫がはじまる前日までに、ぶどう房がなっている範囲の葉をばーっと摘みとっておくことで、収穫当日は収穫人たちがぶどう房を切ること、そしてぶどうをバケツに入れる前におこなう最初の選果に集中できるようにした。これがeffeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)のはじまりだ。

ところが、エフイヤージュ(摘葉・除葉)の時期を早めることによって、ぶどうの質に影響を与えられることがわかってからは、収穫準備よりも早いあらゆる段階でエフイヤージュ(摘葉・除葉)をする生産者がでてきた

floraisonフロレゾン(開花期)~ noeuaisonヌエゾン(結実期)のエフイヤージュ(摘葉・除葉)

ぶどう樹の北側、もしくは東側の1方向からeffeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)する。

コート・ド・ニュイのぶどう畑は、南北にながく連なった丘の、東側から平地にひろがっている。その畑でぶどう樹の垣根は、おおむね南北または東西の列になっている。

すると、とくに夏期は1日のうちに厳しい日差しが長く当たっている面ができる。南北の畝なら西側。東西の畝なら南側というぐあいだ。

だからエフイヤージュ(摘葉)では、南北の列のぶどう樹の垣根にたいしては西側の葉をのこし、東側からぶどう房のまわりの葉をとりのぞく。そして東西の列の垣根にたいしては南側の葉をのこして、北側からぶどう房のまわりの葉をとりのぞく。

南側や西側の葉がなくなると、光合成の効率が悪くなり、またぶどう房が焼けてしまうリスクが高くなる

この段階で摘みとる葉は、ぶどうの花の房やまだ未熟なぶどう房を隠している数枚だ。こうすることで、

・早い段階から段階的にぶどうの果粒を日光にさらすことで、夏期のきびしい日照りによる焼けに対して果粒をつよくすることができる。

・ぶどうの花の房~結実直後の未熟なぶどう房にしっかりと風を通すことで、pourriture griseプリチュール・グリーズ(灰色かび病)に罹るリスクを制限することができる。

traitementトレットモン(農薬散布)の効果を最大に引き上げることができる。

sarmentサルモン(新梢)からはえている葉を摘みとるわけだけれども、そのせいで、ぶどう樹からすると光合成の活動が減ってしまう。

それでも、この時期はentre-cœurオントル・クール(副梢・水色のやじるし)が発芽・生長しはじめ、多くのあたらしい葉を広げるから、ぶどう樹全体での光合成の活動で得られる糖分は変化しないと考えられている。

しかし、将来ぶどうの房になる器官を露出させる作業であるがために、どうしてもぶどう房が雹にさらされやすくなるというリスクがある。

fermetureフェルムチュール(果粒が大きくなりお互いにくっつき出すころ)~ véraisonヴェレゾン(色づき期)のエフイヤージュ(摘葉・除葉)

この時期になると、entre-cœurオントル・クール(副梢)の葉も大きく広がり、重なりあっているから、1本のサルモン(新梢)が、葉とぶどう房と枝とで密集して塊のようになってしまう。

そうすると風通りがひじょうに悪くなる。それを緩和するのがこのタイミングでのエフイヤージュ(摘葉・除葉)だ。

ぶどう樹の北側、もしくは東側の1方向から、ぶどう房がなっている範囲のeffeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)する。entre-cœurオントル・クール(副梢)の葉もふくめて多くの葉をまびくことで、プリチュール・グリーズ(灰色かび病)の出現や蔓延のリスクを制限することができる。

また、毎年のように灰色かび病が蔓延する区画など、もし両側からeffeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)したい場合は、なるべく収穫に近い時期におこなう。

ぶどう房がなっている範囲に、ほとんどぶどう房と枝しかなくなるぼどに両側からeffeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)をおこなえば、対プリチュール・グリーズ(灰色かび病)にはよりいっそう効果的だが、光合成の活動がぶどう房の数に対応できなければ、果粒へ糖分が充分に蓄えられない。

そこで、sarmentサルモン(新梢)が高いところにより多くの葉を茂らせるように、rognageロニャージュ(摘芯)の位置を上げる選択肢がある。

また、ぶどう房が急に露出されることで、夏の日照りによるひどい焼けをしてしまう可能性がある。両側からのeffeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)は、特にリスクが高まる。

それを回避するために、早期からすこしのeffeuillageエフイヤージュ(摘葉・除葉)をはじめておくことがいいというわけだ。

葉は光合成によって糖分を稼ぐたいせつな器官だ。だからといって、最大限に茂らせておけばいいというわけではないということが分かった。

ぶどう樹の健やかな生長や、ぶどう房の成熟のために、その区画のぶどう樹には、いつ、どこに、どれだけの葉を茂らせておくかを判断することが重要だ。