25. réparationレパラスィオン(垣根の基礎の修繕)

ぶどう樹は蔓性で自立しない植物だから、piquetピケ(杭)とfilフィル(針金)そして冬の剪定から夏に掛けての仕事を組み合わせて垣根に仕立てられている。

春からぶどう樹が健やかに生長できるよう、発芽の前に垣根の基礎になる杭と針金を万全の状態にする

枝の生長の段階にあわせて針金を固定する位置を変えるから、針金が丈夫であることはもちろんそれを支える杭も大切だ。

剪定中に剪定鋏であやまって切ってしまった針金を繋ぐ

切ってしまった針金の間に、新しい針金を30cmくらい足して繋ぐ。輪をつくって互いを繋ぐことで、強い力で引っ張られてもびくともしない1本の針金に戻る。

くるくる巻いてペンチで余分を切った後、わずかな尖りをペンチで挟んで押さえる。次に誰がこの針金をさわっても怪我をしないよう丁寧に仕上げる。この1mmくらいの仕事の差が積もりつもると、ぱっと見でも気づくほど美しい畑になる。

さびて切れそうになってきた針金を巻き取り、新しいものに張り替える

御役御免の針金と新品

端を杭から外して、ひたすらぐるぐるルーレットを回して古い針金を集める。

新しい針金を持って畝の端まで歩いていく。この黄色い道具の車輪部分に針金を通して行けば、2本同時に配置できる。

古くなって朽ちてきた杭やトラクターに引っ掛けられて倒れた杭を交換する

 

抜いてできた穴に土を入れてやり、新しい杭を軽く土に刺した状態でその畝の線上にあるか確認する。もし飛び出ているとトラクターに引っかかり、脇の樹ごとけがをしてしまう。確認できたら槇村香ばりにハンマーを振り回して杭を打つ。

最後にfil de tailleフィル・ド・タイユfil du hautフィル・デュ・オーをu字の鋲で留めて、fils doublesフィル・ドゥーブルは杭の上に乗せておく。

村名以上の区画の表土の厚さは40~70cm。杭を打っていると、土壌の下の地層を感じることができる。1級や特級畑では岩盤に杭が当たりそれ以上打ちこめなくなったり、岩の端に杭がすべって曲がってささったり、目に見えない土の中を探っているようでワインの試飲に似ている。

畝のはじめの不安定な杭を交換し固定する

 

畝のはじめの杭はアカシアの樹、畝の中の杭はもみの樹。4本の針金をしっかり張るために端の杭は外側に倒しぎみに打ってある。それを支えるのがfenoxフェノックス(商品名でなくメーカー名なんだけどこう呼ばれてる)だ。

写真真ん中は交換された壊れたフェノックス

まずフェノックス全体を土に打ち込んだら、対になっている棒をフェノックスの穴からさしもう一度ハンマーで叩くと、タコの脚みたいな部分が土の中へ出ていき固定される。最後にフェノックスのフックに短く切った針金を通し、杭の頭を引っ張るように縛る。

針金の長さを調節可能にする

fils doublesフィル・ドゥーブルはぶどうの生長段階にあわせて緩めたり、張ったり調節する必要がある。

針金の端にチェーンをつけておき、杭に固定するチェーンの穴の位置を変えることで調整したり、このような小さな調節器をフィル・ドゥーブルにつけておいて調整する。

grippleグリプル(商品名)
中にバネ付きの滑車みたいなのが入っていて、針金を通すと引っ張ることはできるけど緩めることはできない仕掛けになっている。

緩めたいときには凹んだボタンを針で押す。

杭と針金の修繕が終わる頃には、杭の運搬とハンマーのおかげかみんな体格がよくなる。丁寧に修理して春にむけてさっぱり畑の身支度をするのは人だけれども、畑も人を変化させているようだ。

抜いた杭は冬に暖炉の、夏にバーベキューの火になる。