guyotギュイヨという名称の由来
19世紀中頃にこの剪定方法を広めたJules GUYOTジュール・ギュイヨ博士の名前がtaille en guyot(ギュイヨ仕立て)の由来だ。(写真(上)は1868年に発行されたギュイヨ氏によるフランスのぶどう畑を研究に関する著書、ボーヌのMusée du Vin de Bourgogneブルゴーニュ・ワイン博物館で閲覧可能)
Gevrey-Chambertin Grand Cru “Charmes-Chambertin”
ジュヴレ・シャンベルタン村の特級畑 “シャルム・シャンベルタン”
crochetクロッシェは鉤やフックという意味
ピーターパンと戦うフック船長も、キャピテヌ・クロッシェでクロッシェ仲間。ボクシングのパンチのストレート・アッパー・フックも、ディレクト・ユーペルキュ・クロッシェ。
ぶどう樹の枝が2芽のこして剪定されると、短くてフックみたいだから、crochet クロッシェと呼ばれる。ただ、これはブルゴーニュ地方独特の言い方で、本や学校ではcourson又はcourçonクルソンが正式名称。
baguetteバゲットは細い棒という意味
ぶどう樹の枝以外でそう呼ばれるのは、日本ではフランスパンでおなじみのパンのバゲット。われらがお箸は、複数形になってbaguettesでこちらもバゲット仲間。
サンプルとドゥーブル
simpleサンプル(=シングル)は、baguetteバゲットが1本ということを示している。
guyot doubleギュイヨ・ドゥーブル(=ダブル)というバゲット2本の仕立ても存在するけれど、コート・ド・ニュイにはギュイヨ・ドゥーブルがないからか、普段はサンプルを省いて単にギュイヨと呼ばれている。
guyotはギュイヨ?グイヨ?ギヨー?
グイヨと聞こえるし、自分がグイヨと発音しても通じるけれど、ギヨーと発音してもブルゴーニュでは通じない。
どうもこの差は地方の違いによるようで、先日ボルドーと南仏のヴィニュロンと話してやっと合点がいった。彼らは、guyotをギヨーと発音する。日本ソムリエ協会の教本のタイユの項は、どうやらボルドーや南仏で学ばれた方によって書かれた可能性が高そうだ。
guyotの地方差
そしてそのボルドー人と話していると、同じguyotでも大きな違いがあることが明らかになった。どうも彼の樹のcourçonクルソン(crochetクロッシェ)には4つほど芽がのこされていて、バゲットもしっかり長い。
1本の樹がつけるぶどうの房の数を聞いて気が遠のいた。彼の樹はコート・ド・ニュイのぶどう樹の3倍も4倍もぶどう房をつける。
そんな重労働をして大丈夫なのかと心配すると、毎年充分な実をつけるし、彼らの品種(おなじみcabernet sauvignon, merlotなどなど)に適した収穫量だし、彼の地元で伝統的な方法はこれ、何の問題もないという。おそらく、密植度合いがブルゴーニュより低く、一本の樹が土から得る栄養素が多いのだろう。
仕立てられたぶどう樹の形は、人間が勝手に切る場所を決めたからできたのではなくて、長い歴史の中でぶどう樹からの主張をいつもいつもいつも聞いてきた結果だということを彼らと話してあらためて実感し、まぁ最終的には、早い話がみんなで飲んだくれたのだったヽ( ´¬`)ノ。