生長・生殖・老化など、植物が生きるうえで必要な働きは、それぞれの植物が体内でみずから作りだすいくつかの植物ホルモンによってコントロールされている。
植物ホルモン・オーキシンと植物の生長
もちろんぶどう樹も例外ではなくて、bourgeon terminalブルジョン・テルミナル(頂芽)では、植物ホルモンのひとつオーキシンがつくられている。
オーキシンには、芽・茎・果実・根などの生長をうながす作用があるのだけれど、その作用がとても特徴的だ。
それは、根・茎・芽といった器官によって、生長を進めるために必要なオーキシンの濃度がちがうこと。ちょうどいい濃度でないと、少なすぎても多すぎても生長が抑えられてしまうというのだ。
むしろオーキシンの濃度によって生長させる器官をコントロールしているとも解釈できる。たった1種類の植物ホルモンで、いくつもの器官に対して別々に作用することができるとも言えるわけだ。
ぶどう樹の2種類の芽と、オーキシンの濃度
さてさて。ぶどう樹の芽に話をもどそう。ブルジョン・テルミナル(頂芽)は、みずから作りだすオーキシンによって、ぞんぶんに生長がうながされている。
いっぽう、そんなオーキシンの濃度だと、bourgeon axillaireブルジョン・ナクスィレル(腋芽)にとっては濃すぎて生長が抑制される。この状態では発芽できないか、発芽しても非常にゆっくりとした生長しかでいないということだ。
けれど、rognageロニャージュ(摘芯)によってブルジョン・テルミナル(頂芽)が失われると、オーキシンの濃度がガクっと下がる。そしてブルジョン・ナクスィレル(腋芽)の生長をうながす植物ホルモン・サイトカイニンが増加し、発芽・めざましい生長をすると考えられている。
そのため、ロニャージュ(摘芯)後にブルジョン・ナクスィレル(腋芽)がいっきに発芽して、茎に、枝になってくるのだ。
このブルジョン・ナクスィレル(腋芽)が発芽し、生長した枝をentre-cœurオントル・クール(副梢)と呼んでいる。
すべてのブルジョン・ナクスィレル(腋芽)が同時に発芽するわけではないけれど、発芽する可能性がある状態だ。
わお。あんなにいっぱいあるブルジョン・ナクスィレル(腋芽)がいくつも発芽して、葉っぱを広げて茎になって、生長してなん枚も葉っぱのある枝になるのっ?ぶどう房にあげたい分の栄養が全部持ってかれちゃう・・というより、そんなことなら rognageロニャージュ(摘芯)しないほうがよかったんじゃないの・・・・という気分になってくるので、ここで2回目のロニャージュ(摘芯)をおこなう。
ところでこのsarmentサルモン(新梢)にぶどうの房がひとつもないのはどうしたことだろか。あと、葉っぱも大きくならない・・(図を見やすくするためにぶどうの房は省いて、葉の大きさの生長も新梢の長さの生長も無視しております)