10. tailleタイユ(本剪定): cordon de royatコルドン・ド・ロワイヤ

ブルゴーニュのコート・ド・ニュイで2番目に多く採用されている剪定方法がcordon de royatコルドン・ド・ロワイヤ(ロワイヤルじゃないよ)だ。この剪定方法を有名にした農業学校の名前が由来になっている。

コルドンの剪定はギュイヨ・サンプルからスタートする


こちらが、落葉後のguyot simpleギュイヨ・サンプル

コルドンの剪定はギュイヨ・サンプルから展開させて仕立てることができる。

はじめてcordonコルドンになる樹には
・旧baguetteバゲットの上に、均等な距離で新しい2つのcrochetクロッシェをつくる
・旧crochetクロッシェからの2本の枝のうち、1本を新しいcrochetクロッシェにする

こんな感じ。↓

ギュイヨ・サンプルを剪定してコルドン・サンプルにする場合の、残す芽と切り落とす場所

この時、baguetteバゲットの呼び名が変わりbrasブラになる。brasブラは腕という意味だ。枝は樹液が通るごとに太るから、ブラは年々逞しくなっていく。

cordon simpleコルドン・サンプルに仕立てられたばかりのぶどう樹

こちらがcordon simpleコルドン・サンプルの完成形。brasブラを片側に1本もっているから、simpleサンプル(=シングル)と呼ばれる。

春から収穫にかけて新梢が密に茂ると通気性が悪くなり、病害のリスクが上がるので、クロッシェどうしの間隔を充分とることが大切だ。

cordonコルドンのルール

cordon simpleコルドン・サンプルの2年目以降の剪定で、残す芽と切り落とす場所

・前回のクロッシェから発芽した2本の枝から、新しいクロッシェを1つ作る

芽を意識して剪定する

 

brasブラの上のクロッシェの拡大図

brasブラの上にある1つのクロッシェを拡大してみた。

旧クロッシェから2本の枝がどの方向に発芽しているか、そして、それらの枝の2つの芽がどこに付いているかにはバリエーションがある。

このとき重要なのは芽の方向だ。なぜなら、その芽が向いている方に新しい枝が生長していくからだ。枝を切るのが剪定なのだけれど、その仕事の精度の高さは、枝を見るだけでなくどれだけ残す芽に意識を向けているかで決まる。

左の図で選んだ枝は、かなり右に倒れているけれど、より下に位置しているし、なにより下の芽がまっすぐに発芽できる空間がある。

それに比べて右の図では、一番下の芽は低いところに位置しているけれど、垂直に発芽するには難しい。だから、位置は少し高くても左の枝をクロッシェに選んだ。

避けたいのは、垣根から隣の垣根の方へとび出して発芽する芽。毎年わずかずつであっても、はみ出して生長してくると、土を耕すために通るトラクターや馬に引っ掛けられてしまう。そうすると枝が傷ついたり、樹ごと倒れ、根が耐えられなければ、そのまま死んでしまう。


だから、剪定中はその垣根の中心線をたえず意識してfil de tailleフィル・ド・タイユになるべく沿うようにクロッシェを選ぶようにする。

 

中心線である針金から離れないように枝を選ぶ。

同じ剪定方法に則っていても、同じ注意事項を守っていても、それでも、剪定する人によってまったく違う枝を選ぶことがよくある。また、まったく同じ枝を選んでいても、別の意図でそう決めている場合もある。

十人十色だし、その十人もいくつかの捨てがたい他の案をもちながら切っている。tailleタイユ(冬の本剪定)は、本当におもしろい仕事なんだーー。