それでもどうしようもなくbrasブラが弱ってしまい、充分な太さのsarmentサルモン(新梢)を恵むことができなくなってしまった場合。
vieux boisヴュー・ボワ(ぶどう樹の2歳以上の部分)から発芽する枝、gourmandグルモン(徒長枝)を数年にわたって剪定し、あたらしいブラに育てることができる。
ギュイヨ・プーサールの剪定方法が重要視している2本の管を最大限に丈夫に太らせることと、bois mortボワ・モー(枯れた部分)をつくらないことが、あたらしいブラの再生には不可欠だということに注目しながら、実際の剪定のながれを見ていこう。
4回の剪定と4年間の生長
2017年秋、落葉後。
剪定、brûlageブリュラージュ(切り落とされた枝を集めて燃やす)、attachageアタシャージュ(baguetteバゲットの固定)のあと。
2018年、春におこなうévasivageエヴァズィヴァージュ(摘芽)で、必要な芽をのこす。
これらの芽はぶどう樹のvieux boisヴュー・ボワ(2歳以上の部分)から発芽しているので、gourmandグルモン(徒長枝)と呼ばれる。
2018年秋、落葉後。
生長したグルモンを今回の剪定で2芽のこして切ると、crochet de rappelクロッシェ・ド・ラペルになる。
グルモンはいくら見た目が丈夫でも、今回の剪定でいきなりバゲットやクロッシェになることはできない。なぜなら、次の春にこのグルモンから発芽する芽が生長して枝になっても、ぶどう房をつける確率が極めて低く、そしてなにより、幹の太い管からグルモンへとおる管がまだ未熟だからだ
上の図では、緑色のちいさな矢印で右のブラの太い管からグルモンへとおる管をイメージしている。この緑色の管を、最低でも2年間はクロッシェ・ド・ラペルとして大切に剪定しながら、確実に樹液をとおす丈夫で太い管に育てることが重要だ。そうすれば、右側のあたらしいブラにすることができる。
2019年、落葉後。
今回も2芽のこす。
緑色の管も少しずつ太ってきた。
2020年、落葉後。
今回はbaguetteバゲットをつくってみよう。
2021年、落葉後。
前回(2020年)の剪定の時に右側にバゲットをつくったことで、この年の生長期は緑色の管におおくの樹液がとおり、いっそう太く丈夫な管になった。
もうあたらしいブラにとっての立派な生命線になったと言っていいだろう。ふたたびクロッシェとバゲットの位置を毎年交換できるようにもなった。
gourmandグルモン(徒長枝)が発芽する条件
グルモンが発芽するにはその枝に充分な太さの管がとおっていて、しかも枯れた部分がないことが最低条件だ。なぜなら、管がなければ樹液がと通れないから発芽はありえないし、そこに枯れた部分ががあれば物理的に邪魔されて発芽することができないからだ。
とくに途中まで樹液をたくさん流せる丈夫で太い管があるにもかかわらず、その先の管があまりにも細かったり、その先の芽が少ないときぶどう樹は、樹を大きくするため・多くの葉を広げて糖分をたくさん稼ぐためにグルモンを発芽させる。
つまり、ギュイヨ・プーサールの剪定では、2本の管を最大限に丈夫に太らせることと、枯れた部分をつくらないことが重要視されているから、途中から管が細くなったり、芽が少なくなるという悪い状況になると、自動的にグルモンが発芽しやすい状態になるのだ。
ギュイヨ・プーサールは、ぶどう樹の解剖と生理をよく知ったからこそ生まれた仕立て方だというのにも納得がいく。
おかげで、ブラが弱ってしまってもグルモンが発芽するから、あたらしいブラを再生することができる。あたらしいブラががあるからこそ、ぶどう樹はぶどう房を恵みながら生長しつづけることができる。グルモンの発芽は、ぶどう畑で生きるぶどう樹の寿命に直結しているのだ。
2本の管を最大限に丈夫に太らせることと、bois mortボワ・モー(枯れた部分)をつくらないことは、まさにvieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(ぶどうの老樹・古木)の仕立て方を考えるときに不可欠な視点だ。