terroirテロワールの語源と誕生

テロワールの直接の語源

terroirと辞書を引くと、terreテール(大地、地面、土、土壌、地球など)が語源であることには違いない。なのだけれど実は、terroirテロワールとterreテールの間に、もう一つ重要な単語が存在する。そう、terroirテロワールの直接の語源は、べつにもう1つあるのだ。

それはterritoireテリトワール
そう、領土とか領地という意味をもつ、あのことばだ。

語の派生の歴史を見るともう少し事態が複雑だったので、図にしてみた。

terroirテロワールという語の誕生には、テリトリー、領土、領地ということばが深く、強く、影響していることがわかる。これは一体どういうことか。

 

2つのヘンテコなもし

もし、いやこんなへんてこなもしはあるはずないけれど、ブルゴーニュのすべてのピノ・ノワールが同時に収穫され、1つの巨大な醗酵樽(どんな樽だよ)でいっきに醸造しなければならないというのが伝統だとする。

そういうブルゴーニュ・ワインは、1年に1種類しかできないわけで、ヴィンテージ(収穫年)による違いがあっても、畑の違いを比較する相手がないために、terroirテロワールという概念はできあがらなかっただろう。

一方で、そもそも厳密にいえばぶどう樹の植わっている環境は、1本いっぽん毎に違うわけで、もしこの絵のように樹毎に小さな醗酵樽でちまちま醸造したら、それぞれに違うワインができるだろう。

醸造中のブルゴーニュの天使の様子 まさかの手絞り

それでも実際には、これらのぶどうの樹々を1つの単位の区画として線を引いただれかが、ここにいたのだ。

 

béni des dieuxベニ・デ・デューと人間

ある一帯がbéni des dieuxベニ・デ・デュー(神に祝福された土地、恵み =質のいいぶどうが穫れる土地)であっても、dieuxデュー(神)だけじゃグラン・クリュのワインは造れない。

そうそう。だれかがその不思議な場所をみつけて、その隣の畑と区切った。そして、その区画のぶどうをたった1つの醗酵樽へいれワインを造った。

これで、territoireテリトワール(テリトリー)がterroirテロワールの直接の語源であることに納得がいった。

実は人間によって区画分けされて、はじめて存在するというところにも、テロワールの概念のおもしろさがある。

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