4. 若い樹と樹勢と生産性

この春植えた樹。               こちらは13歳まだまだ若い樹。

若い樹は樹勢が強い

樹勢とは、樹が大きくなろうという勢いのことだ。樹勢が強い樹は前年よりも枝と葉を増やし、枝を長く遠くへ生長させることで光合成を有利に行って、幹も枝も太く強く大きくなる。

樹勢が強いと、樹は光合成が用意した糖分を樹を大きくすることに使うから、ぶどう果粒への供給は優先順位が低くなる。

若い樹は生産性も高い

生産性とは、たくさんの実をつけ子孫を繁栄させようという勢いのことだ。

たくさんの房をつけているぶどう樹は、どんな構造をしているのか。そのひとつを見ておきたい。ミソは枝にある。

ぶどう樹の新梢と副梢のぶどう房の色の比較。

こちらは収穫日の1ヶ月前の写真

今年の春発芽して枝となったsarmentサルモン(新梢)に、色づいたぶどうがついている。

そして、新梢から何本もentre-cœurオントゥル・クール(副梢)が伸び、そこへまだ緑色のぶどうver jusヴェル・ジュ(副梢になる房)がついている。

さて、枝によってぶどう果粒の色がこんなに違うのはどうしたことか。

新梢についている房は、春に新梢が発芽した時点で既にぶどうの形をした花の房を現しているが、ver jusヴェル・ジュの花房は新梢から副梢が発芽して、やっと姿を現す。

つまり、副梢の房の花は、ぜったいに新梢の房の花より後に開花するのだ。だから、実が熟しはじめるタイミングも遅れる

たとえば、上の写真のver jusヴェル・ジュ(まだみどりの房)の花は、新梢についた実(色づいた房)の3週間後に開花した。

だから、これらの房を同時に収穫・醸造するということは、大ざっぱに言えば3週間前のまだ未熟なぶどうを混ぜているのと同じΣ(°д° )結構衝撃的。

ver jusヴェル・ジュだけを集めて醸造すると平均よりアルコール度数が2%低いワインができるというデータがある。それは糖分に代表される、ぶどうの他のエキス分も平均より少ないことを物語っている。

ヴィエイユ・ヴィーニュの樹勢と生産性

それに対して、vieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)はentre-cœurオントゥル・クールを発芽しにくく、発芽しても実がつかないことが多い。

このことがまた、古木のぶどうだけで造ったワインが外観香り味わいにおいて、その畑の特徴をみごとに表現する、ひとつのポイントになっている。

ただ生長を待っているだけでは、ブルゴーニュのvieille vigneにはならない

さて。
若い樹、それがだんだん、だんだんとvieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(ぶどうの古木)になるのだ。
そうだけどさ。

ただ生長を待っているだけでは、ブルゴーニュのvieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(ぶどうの古木)にはならない。若い樹のときから常に施される仕事がある。それにはどんなものがあるのか、見ていこう。