16. tailleタイユ(本剪定): guyot poussardギュイヨ・プーサール : brasブラの発育がわるくなってきた場合の剪定

brasブラの発育がわるくなってきた。この右側のcrochetクロッシェは、充分な太さのsarmentサルモン(新梢)を生長させられない状況だ。生長期を終えているのにもかかわらずsarmentサルモン(新梢)が細く短い。

このぶどう樹のなかの2本の管をイメージしてみよう。このような細く短いsarmentサルモン(新梢)になったのは、右のbrasブラのなかの管が急に細くなってしまったからだと考えられる。

その原因は前年の剪定のときに、枝を切り落とす場所が幹に近すぎたのだろう。樹液がとおる管の組織の水分が失われ、管が正常に働くことができなくなってしまった。

しかし、完全に乾いてしまったわけではなく、この2本の細く短いサルモンを生長させることができる程度の管の状態だということだ。

剪定の方針の選択肢

通常のギュイヨ・プーサールのルールに則って剪定するなら、今回は
右側のブラにバゲット1本と、プティ・クロッシェ1つ
左側のブラにクロッシェ1つ
をつくるはずだけれど、この細く短いサルモンをバゲットにするのは難しい。

そこで考えられるのが、2つの例外的な方法だ。目的が違うところに注目しよう。

案その1 
今回はクロッシェとバゲットの位置の交換はあきらめる。

充分な太さのバゲットをつくることができるので、収穫できるぶどう房の数を確保する方針だ。しかし、右側の管についての対策をしておらず、現状維持的な剪定と言える。

案その2 
右側にはバゲットだけつくり、プティ・クロッシェをあきらめる

そしてbaguetteバゲットを折れないように注意して、強く肘型に曲げる。バゲットのなかの維管束を締めるためだ。こうすると締められた部分の前にある芽(赤く塗った芽)の生長を助けることができる。

そして確実にその芽(赤く塗った芽)は次回の剪定の時に、よりよいサルモンになるだろう。左側にはクロッシェの2芽しかないため、このぶどう樹全体の樹液が赤く塗った芽によりいっそう集中するからだ。

悪い剪定をしたせいで乾いてしまった管の部分は生き返らないけれど、管の生き残っている部分を太く丈夫にしようという方針だ。その点において、この方法はその1の方法よりもギュイヨ・プーサールの考え方に忠実だと言えそうだ。

ただ、圧倒的に芽の数が少ないので収穫量も下がってしまう。でも、これらの芽が丈夫なサルモンに生長すれば、次回の剪定で再び通常通りのバゲットを作ることができるため、数年単位の収穫量はそれほど下がらない。