48. relevageフルヴァージュ(新梢の誘導)

ébourgeonnageエブルジョナージュ(摘芽)でのこした芽が、春の暖かさの波にのってぐんぐん生長してくる。

小さな芽が伸びて茎になり、りっぱな枝になっていく。この図で緑の矢印でかいてある枝がこの年のsarmentサルモン(新梢)だ。

sarmenサルモン(新梢)からは葉がつぎつぎと広がるし、発芽したときにすでに見えていたぶどうの花の蕾の房も、このサルモン(新梢)についていて開花はまだかと生長をつづける。

こんなふうにサルモン(新梢)には、ぶどう樹の栽培にとって重要な器官が集中している。ところが、若いサルモン(新梢)はやわらかくて自立しないので、ある程度の高さまで生長をほおっておくとその重さで土の上に倒れてしまう

そこで、大切なサルモン(新梢)をうまく管理するために、relevageフルヴァージュ(新梢の誘導)をおこなう。

この作業がいいタイミングで適切におこなえるかどうかで、ぶどう樹の健康にも、収穫のぶどう房の質も量にもおおきく影響がでる。

traitementトレットモン(農薬散布)のページでみてみたとおり、サルモン(新梢)が土に接触することのリスクの高さは計り知れない。

この時期のサルモン(新梢)全体としても、個々の器官の葉も、花の蕾の房も、柔らかいうえに水分や栄養分をおおく含んでいてミルデューオイディウムといったカビのえじきになりやすい。

relevageフルヴァージュ(新梢の誘導)によって、大切だけどとても弱い器官に、土に多く住むカビを触れなさせないようにできるのだ。

また、丁寧にフルヴァージュ(新梢の誘導)することで、農薬は最低限の量で最大の効果を発揮することができる。

フルヴァージュ(新梢の誘導)で、ぶどう樹の列が垣根になる

まずは図をみながら、重要な脇役たちを思い出しておこう。

こちらは、ぶどう樹の列を真上からみた簡略図。

ぶどう樹の列はpiquetピケ(杭)で始まりpiquetピケ(杭)で終わる。くわえて、列の中では7~8本のぶどう樹ごとにピケ(杭)が打ってある。

そしてピケ(杭)には、filフィル(針金)が高さちがいに2本、地面に平行になるように固定されている。高いほうがfil du haut フィル・デュ・オーで、低いほうがfil de taille フィル・ド・タイユだ。この2本の針金は、すべてのピケ(杭)にU字のくぎで固定されている。

そしてこちらが、フルヴァージュ(新梢の誘導)の主役 fils doublesフィル・ドゥーブル。sがついて複数形になっているとおり、垣根をはさんでこちら側とむこう側に1本ずつで計2本だ。

特徴は、ぶどう樹の列の始めと終わりのピケ(図のベージュの杭)にだけ固定されているということ。この段階では冬の終わりの仕事でおこなったとおり、2本のfils doublesフィル・ドゥーブルが地面におろされている状態だ。

サルモン(新梢)が生長してきた!フルヴァージュ(新梢の誘導)をするぞ。

垣根のむこう側の針金は点線でかいてみた。ながく生長してきたサルモン(新梢)を、このようにfils doublesフィル・ドゥーブル(2本の針金)を下から持ち上げ、はさんで固定し、倒れないようにするのがフルヴァージュ(新梢の誘導)だ。

releverと綴ると、再び起こす・引き上げるという動詞だ。冬の終わりに地表に下ろしておいたfils doublesフィル・ドゥーブル(2本の針金)を、ふたたび高いところに固定することから、この作業はrelevageフルヴァージュと呼ばれる。

ちなみに片仮名表記はルルヴァージュのほうがいいのだろうか・・。フでもルでも、これでぶどう樹の列がやっと垣根になってきた。ここまで長かった・・48回目だべ。お読みくださる皆様もお疲れ様です。

はさんだ状態をたもつためにつかうのが、このagrafeアグラフ(留め金)。

agrafeアグラフ(留め金)は、ぶどう樹にはさまれているピケ(図の水色の杭)の前後2ヶ所に留める。そうすることでぴったりと固定されて、強い風がふいても大切なサルモン(新梢)が倒れないぶどう樹の生垣になる。

フルヴァージュ(新梢の誘導)はつづく

agrafeアグラフ(留め金)を使う重要な利点はまだある。サルモン(新梢)はこれからもどんどん生長していくから、その高さにあわせてfils doublesフィル・ドゥーブル(2本の針金)の高さを上げる必要がある。

そのためにこの針金はこれらのピケ(水色の杭)には固定されておらず、アグラフ(留め金)を留めなおすことによって自由に高さをかえられるようになっているのだ。

また、図のようにfils doublesフィル・ドゥーブル(2本の針金)の高さを手軽にかえられるように、ピケ(ベージュの杭)に高さちがいにストッパーをつけるなど工夫されている。

sarmentサルモン(新梢)は日光を浴びると、みるみるうちにいちばん高い針金のfil du haut フィル・デュ・オーもかるがる越えて伸びてゆく。サルモン(新梢)の先端には、小さな葉が数枚あって、その表面の産毛に太陽があたって白くひかり、風があればほよほよとそよいでいる。

数週間後にはこの小さい葉がみごとに広がり、光合成の稼ぎ頭となってぶどう樹の栄養を支えるようになる。そのころ、relevageフルヴァージュ(新梢の誘導)は最終段階に入る。