コート・ド・ニュイでは土壌の性質と気候条件に適したぶどう品種であるピノ・ノワールが植えられている。さらにピノ・ノワールの中でもよりその区画やワインのスタイルにあったクローンが選択されている。
そのうえで、ぶどう樹がそれぞれの区画とより調和し、収穫の質と量のバランスを取れるよう剪定方法が選ばれている。
コート・ド・ニュイの2大剪定方法の特徴
guyot simpleギュイヨ・サンプル
ピノ・ノワールの生産性をもっとも発揮させられる剪定方法。だから剪定後の春の仕事の中で、発芽した芽の数を調整することが大切だ。発芽した芽を減らせば、1本の樹になる房の数をコントロールできるし、新梢が密に茂るのを防ぎ、病害の発生を抑えられる。
cordon de royatコルドン・ド・ロワイヤ
ピノ・ノワールの生産性を弱める剪定方法。ぶどう房の数が減る。また、房が小さくなる。それは1房につく果粒の数が少なくなり、果粒そのものも小さくなるからだ。樹勢が強すぎると判断された場合、この剪定方法が採用される。新梢が間隔をもって均等に発芽するため空気も通りやすく、病害の発生を抑えられる。
生産者による捉え方の違い
ただ、ヴィニュロンによってこれらの特徴のとらえ方も違う。
ある人は、区画ごとに適した剪定方法をみいだして、それと決めた方法でその区画のすべての樹を剪定する。
またある人は、ギュイヨ・サンプルこそがピノ・ノワールにとって完成された剪定方法だという考えのもと、彼のすべての畑をギュイヨ・サンプルで剪定する。
また別の人は、区画単位ではなく樹単位でどの剪定方法が最適かを見極めながら剪定するから、いろいろに剪定された樹が混ざった垣根をつくっている。
剪定方法の変更
畑によっては、昔gobeletゴブレだった樹がギュイヨ・サンプルに変更されたり、コルドン・ドゥーブルがギュイヨ・サンプルに変更された名残のある樹を見つけることができる。

こちらの区画は、まさに変更中。コルドン・ドゥーブルに仕立ててあったのだが、畑に適していなくて既にかなり変則的なコルドン・ドゥーブルになっていた。だから思い切ってこの区画の樹すべてをギュイヨ・サンプルに切換えていく。
ぶどう樹と剪定方法と畑の一体化
長い歴史の中で多くの剪定方法が試され、現在採用されている方法はかなり洗練されている。けれども、万能ではない。今もその進化の途中だといえる。
ぶどう畑は人がぶどう樹を植えるから存在するのであって、ぶどう樹は天然の状態からはかけ離れている。そう考えると、完璧な剪定方法なんて存在しないのかもしれない。
そうかと思えば、垣根にしないでぶどう樹が1本いっぽんが独立した戦前の仕立て方への回帰を果たした畑も存在する。
それでもコート・ド・ニュイのピノ・ノワールは区画ごとに、樹ごとに、生産者が剪定方法を選ぶことによって、ぶどう樹と剪定方法とその畑の特徴が一体化し、別けて離すことのできない存在になる。