おおきく生長したsarmentサルモン(新梢)がrelevageフルヴァージュ(新梢の誘導)とaccolageアコラージュ(新梢の固定)によって、先端までまっすぐに並んだ。
そのサルモン(新梢)の先端にある芽を切り落とすことをrognageロニャージュ(摘芯)という。
この芽はすべてのサルモン(新梢)に必ず1つ備わっていて、先端に位置することからbourgeon terminalブルジョン・テルミナル(頂芽)と呼ばれる。
ブルジョン・テルミナル(頂芽)と新梢の生長の関係
bourgeon terminalブルジョン・テルミナル(頂芽)が発芽すると、sarmentサルモン(新梢)の先端に、あたらしいブルジョン・テルミナル(頂芽)があらわれる。
しかも、節・芽・葉・茎といった器官が1セットになってあらわれる。寒さがやってこない限り、あたらしいブルジョン・テルミナル(頂芽)の発芽は止まらないから、サルモン(新梢)の先端はどんどん高くなっていく。
ロニャージュ(摘芯)のねらい
rognageロニャージュ(摘芯)でブルジョン・テルミナル(頂芽)を切り落とすことによって、サルモン(新梢)はこれ以上この垂直方向への生長ができなくなる。
垂直方向への生長につかわれるはずの栄養分を、ぶどう房の生長と成熟に割りあてたいというねらいだ。
ロニャージュ(摘芯)途中、切った新梢と今から切る新梢。
葉の生長と糖分
ぶどうの葉はおおきく広がると、光合成でおおくの糖分を獲得するけれど、そこまで生長するためにじつは大量の糖分を必要とする。
小さい葉ももちろん葉緑素をもっているから、光合成をするけれども、自分で作り出す糖分よりも自分で消費する糖分の方がおおいのだ。よく『大きな葉は糖分の輸出業者、小さい葉は輸入業者』とたとえられる。
だから、春から収穫までのぶどう樹の生長期に、ブルジョン・テルミナル(頂芽)から小さい葉がずっと生まれ続けてしまうと、糖分の大損失になると考えられている。
大きな葉は何枚必要か
そこで、『1房のぶどうを成熟させるためには大きく生長した葉が何枚必要か』を考えて、ロニャージュ(摘芯)でサルモン(新梢)を切る高さを決める。
地表から40センチの高さからサルモン(新梢)が生長し始めているコート・ド・ニュイの場合、120cmというのが一般的と言われているけれど、130cmも140cmも少数派というわけではなさそうだ。
1房あたりで数えるなら、大きな葉8~15枚くらいの幅だろう。
もちろんその数え方を不毛と考えるひともいる。光合成が用意する糖分は、今年のぶどう樹の生長のためだけではなくて、来年以降の備蓄として幹や根にしっかりと取っておかなくてはいけない。そのぶんはどう数えるんだろうかという疑問だ。
さまざまなぶどうの産地で、品種で、おおくの栽培家がこれらの疑問に実践的にとりくんでいて、とても興味深い。
1年ずつ歳を重ねて健康にぶどうを恵みながらvieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(ぶどうの古木)になることができていることから、120~140cmは1つの正解とも考えることができる。
ロニャージュ(摘芯)の方法
古くから、ロニャージュ(摘芯)はこのようなcisailleスィザイユ(大ばさみ)でおこなわれていた。今でも生産者によっては手切りにこだわっているひともいるし、トラクターが入れない条件の区画では手切りが主流だ。
今日では毎度おなじみの、ぶどう樹の列をまたぎながら前進することができるトラクター、enjambeurオンジャンブーにロニャージュ(摘芯)用の装備をつけておこなうことができる。また、トラクターよりもっと小柄で軽量な車両でも可能だ。
このトラクターの場合、rognageロニャージュ(摘芯)用の装備は黄色い部分。
畑に入るときに、回転する刃がついた2枚の板を両側に開くと、地面と平行になる。そして刃を高速で回転させながら前進すると、サルモン(新梢)を一定の高さで切り揃えることができる。つまり先端のブルジョン・テルミナル(頂芽)が切り落とされる。
地表からの高さを120cmにするのか、それとも140cmにするのかという調整は、この装備の高さによって決まることになる。
びーしーっと同じ高さで切りそろえられたぶどう樹は、だんだん垣根栽培や垣根仕立てと呼ばれる姿にふさわしくなってくる。
この垣根スタイルは、隣り合うすべてのぶどう樹にたいして等しく仕事を施すことができる。その利点をじゅうぶんに得るために、relevageフルヴァージュ(新梢の誘導)やaccolageアコラージュ(新梢の固定)の段階で1本のサルモン(新梢)も逃すことなく、ちゃんとfils doublesフィル・ドゥーブルのあいだに収めることが大切だったのだ。
ロニャージュ(摘芯)は、sarmentサルモン(新梢)の先端にある芽ブルジョン・テルミナル(頂芽)を切り落とすことだけれど、実践的には一定の高さでサルモン(新梢)を切ることだ。だから、tailleタイユ(冬の本剪定)にたいしてロニャージュ(摘芯)は夏剪定ともとらえることができる。
また、1度目のロニャージュ(摘芯)は、écimageエスィマージュともいわれる。コート・ド・ニュイではこのエスィマージュのほうが1度目の摘芯をあらわす語として一般的なほどだ。
あれ?1度目っていいました。っていうことは、2度目がありますね。ブルジョン・テルミナル(頂芽)がなくなったというのに、またいったいなにを切ろうというのか。
まずは、ロニャージュ(摘芯)とぶどう樹の生長の関係をみておこう。
おもしろくなってきた。